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2011年5月27日金曜日

福島第一原発のメルトダウンについて、ヤバいことを考えてしまった

またWebと関係ないことですが、福島第一原発のメルトダウンについて書きます。

「知ってた」って言われるかもしれないけど、ちょっとヤバそうなことを思いついてしまったので。

前もって言っておくと、私は原子力の専門家ではありません。話の内容は、半分いや三分の一くらいで受け止めてください。


今月12日、東京電力(以下「東電」と記す)から衝撃的な発表があった。

福島第一原発1号機で、事故直後に「炉心溶融」が起きていて、燃料の大部分が溶融し、圧力容器の底にたまった状態になっていたというのだ。(福島第一原発1号機で「メルトダウン」、東電が認める - IBTimes

これまで、燃料は「一部損傷」と公表されてきたものが、一転、ほぼ全ての燃料が溶融し、圧力容器には数センチ程度の穴があいて、放射性物質を含む冷却水の一部が漏れ出ていたという。

12日後の24日、今度は、2号機と3号機に、1号機と同様の「炉心溶融」が起きており、圧力容器にあいた穴から冷却水が漏れているという発表がなされた。(福島第1原発:1号機と2号機の格納容器に穴の可能性 - 毎日jp

圧力容器内に設置された水位計が正しく機能しておらず、実際には容器内にほとんど水が残っていなかったことから判明したようだ。

これらの発表に対して、ネットユーザーは口々に「知ってた」と、驚きを隠せない様子である。(痛いニュース(ノ∀`) : 福島第一原発1号機「メルトダウン」…東電認める

ここで注意すべきことは、これらの発表は、現状で入手しうる情報から東電が導き出した「推測」であり、目で見て確認した「事実」ではないということだ。つまり、今後新しい情報が入り次第、覆る可能性があるということ。これまでもそんなことばかりだったので、今さら言う話でもないかもしれないが。


東電発表による現状の推測

東電の発表によると、1〜3号機の燃料棒は、ほとんど全て溶融し、圧力容器の底に溜まっているという。さらに、容器には複数の穴があいていて、その大きさは全て足しても数センチくらい。そこから水が漏れ、容器の中にはほとんど水が無いらしい。

しかし、燃料棒が溶けて圧力容器の底に溜まっているのが功を奏し、少量の水がそれを安定して冷却しているのだという。最悪の事態は避けられた、という見方をしているようだ。

直径数センチメートルの穴の違和感

しかし、この報道を聞いて、私は強い違和感を覚えた。それは、圧力容器にあいたとされる複数の小さな穴のことである。

東電によると、直径数センチメートルの小さな穴が複数あいている可能性があって、それらを全て集めると直径7センチメートルとか10センチメートルくらいになるらしい。これは、圧力容器内の気圧から推測して導き出したのだとか。

しかし、ちょっとおかしくはないだろうか?

圧力容器は厚さ16センチメートルの分厚い鋼鉄製である。そこに数センチメートルの穴があくとはどういう状況か?

最もよく言われている「溶融した燃料が穴をあけた」のだとすると、ドリルであけたような細い穴が複数あいていることになる。不自然極まりないし、核燃料が全方向に放熱していることを考えれば、そう都合よく一方向に向かって穴をあけることはありえない。周辺も同時に溶け、穴はもっと大きくなっているはずだ。

もう一つは、テレビニュースの解説図で見たのだが、圧力容器に亀裂が入るケース。これならば、ある程度内部圧力を保ちながら水が漏れるという状況も説明がつく。隙間を全部合わせると直径数センチ程度の穴に相当する亀裂が発生しているとか、想像できなくもない。

しかし、鋼鉄の亀裂は、材料に酸化物など不純な物質が混入している場合に起こる現象である。この世で最も強度が求められる原子炉に、そのような劣悪な材料が使われるはずもない。地震の震動にはもちろん、炉心溶融時の高温高圧でも亀裂を起こすようなことにはならないだろう。その前に溶けるんじゃないだろうか。

最もあり得るのは、圧力容器底部に落下した溶融燃料の塊が、その熱で直接鋼鉄を融かした可能性だ。ただし、先に挙げたように、ドリルのような細長い穴があくのではなく、圧力容器の底を広い範囲で融解しているパターン。

しかしながら、そうした場合、もっと大きな穴があいていなくてはおかしい。炉心が全て溶融したのだから、核燃料はライトバンとかマイクロバスくらいの大きさの塊になっているはず。それが、もし圧力容器の底部に穴をあけたのなら、直径数メートルになっているはずである。

ひょっとして、何らかの理由で、ほんの数センチ穴があいた状態で鋼鉄の融解が止まるような奇跡が起こったのかもしれない。しかし、2号機と3号機も似たような状態であることを考えれば、そのような偶然も想像しにくいだろう。

では、この「全部合わせると直径数センチメートルになる小さな穴」の正体とは一体なんなのだろうか?

繰り返すようだが、この穴は、圧力容器内の気圧から割り出した「推測」でしかない。つまり、穴の大きさも数も「事実」とは言い切れないわけだ。もしかしたら、穴すらあいていないのかも知れない。

ならば、次のような仮説を立てることも可能だ。

クラストで覆われた核燃料

その前に、溶融した核燃料がどのような状態になっているかを考えてみたい。

これも、現物を視覚的に確認できるわけではないが、日本原子力技術協会最高顧問の石川迪夫氏は、溶融した核燃料を直径数メートルの卵形で、厚さ20〜30センチの硬いクラスト(カサブタのような外皮)で覆われている、と予想している。

核燃料の表面のみが冷却されて固まり、中身はドロドロに融けた状態というわけだ。

中身の温度について、石川氏は、純粋な二酸化ウランではなく、ウラン、ジルコニウム、酸素の三元合金のであることから2300℃程度と言っている。しかし、東電のモニタリングによると3000℃近くまで上昇していることから、そのくらいの温度を維持している可能性が高いだろう。二酸化ウランの融点は2800℃なので、かなり粘度の低い、ゆるゆるの液体になっていたと考えて良いと思う。

石川氏は2300℃で卵形を想定していたので、それよりもかなり潰れて、卵パンとか甘食くらいの形状になっていたかもしれない。

少量の水で冷却は可能か?

もう一つ、仮説を立てる上での前提条件を示したい。

東電は、溶融した燃料は圧力容器の底にほとんど落ちたが、少量の水が残っているため安定して冷却されていると話している。

しかし、そんなことが可能であるのか、冷静に考えてみたい。

確かに、燃料を冷却するには水が最も効率的で、水に浸してある以上、その部分は冷却されてクラスト状に固まっているはずである。しかし、それは水に触れていることが大前提ではないか。

なぜ、このことが指摘されないのか不思議なのだが、溶融した核燃料は圧力容器の底に溜まっていて、容器と核燃料の間には水が入り込む隙間は無いはずなのだ。しかも、核燃料の熱で圧力容器に穴があいたとするなら、容器の底と核燃料の一部は、融合して一体化していることも考えられる。

健全な状態の圧力容器の中では、核燃料は燃料集合体に分けられ、燃料棒に分けれられ、さらにペレットという小さいブロックに分けられている。そして、そのペレットの隙間にまでくまなく冷却水が入り込んで、効率よく冷却(熱交換)が行われている。

しかし、燃料が溶融して一箇所に集まった場合、そうはいかない。全体の表面積が小さくなり、ただでさえ冷却しにくい状態な上、その片面は圧力容器と同化してしまっているからである。つまり、冷却水が触れている上半分の表面だけがクラスト状に冷え固まり、残りの部分は高温の液体のままなのだ。

そのような状況で、安定した冷却などできているはずがない。「少量の水」と書いたが、大量の水でも不可能だろう。

では、どうして(計測データ上)現状は安定して見えるのか。やっと本題。

仮説:圧力容器の底には大穴があいていた

溶融して液状化した核燃料は、一旦圧力容器の底に溜まる。容器の底に、わずかにでも冷却水が残っていたなら(水蒸気爆発が起きていないので、全く残っていなかったかも)、それに触れている上面だけがクラスト状に冷え固まり、下面は容器底面の鋼鉄を融かし始める。

圧力容器は、厚さ16センチメートルと極厚だが、鋼鉄の融点が1600℃程度しかないため、いとも簡単に穴があいて液状の核燃料が容器の外部に漏れ出す。最初は小さな穴だが、徐々に穴を広げて、最終的には液状化した核燃料が、ほとんど全て漏れ出したかもしれない。

冷却水に冷やされてクラスト状に固まった核燃料の上面は、ドームのような形状を築いていたと思われるが、核燃料が漏れ出すにつれて、どんどん水圧に押しつぶされていっただろう。

そして、液体状の核燃料がほとんど外部に流れ出た後で、最終的に、そのクラストのドームが、カサブタとなって容器の穴を塞いだと考えられる。

もっとも、そのカサブタは、穴を塞いでいるといっても完全に密閉しているわけではない。冷却水をせき止めることはできないが、空気の流れはある程度妨げていると予想される。そうすると、圧力容器内の気圧は若干高めになり、直径数センチメートルの穴しかあいていないという東電の推測と、データ上は矛盾しないことになる。

また、核燃料は圧力容器内にほとんど残っておらず、クラスト状に固まったわずかな残りカスがブスブスと熱を出している状態なので、容器内の温度が比較的低温ながらも発熱を続けているとする東電の発表と合致する。

東電は、この状態を「安定している」と言っているが、私の推測が間違っていなければ、燃料自体がすでに存在しないために、一見安定しているように見えているだけである。

溶融した核燃料は今どこに?

では、溶融し、圧力容器の底から流れ出た大部分の核燃料は、今どこにあるのか。

まず、格納容器の底に落下したことは間違いない(※私の推測が間違っていない場合)。格納容器には冷却水が無く、また厚さ3cm程度の鋼鉄製であることから、それはあっさりと突き破り、さらに下のコンクリート基礎まで到達したと思われる。

コンクリートの融点は鋼鉄よりも高いが、3000℃には耐えられないため、コンクリート基礎以下の部分も、ある程度融解している可能性がある。

このように考えると、圧力容器にも格納容器にも水が溜まらず周囲に汚染水をまき散らしている現状に説明がつく。

まとめ

私のような素人が、こうやって予想を立てたり推察したりすることには、たいして意味のあることではないのだろう。しかし、東電の発表を見ていると、どうも危機意識が足りていない気がしてしかたがない。そう思ったら、いても立ってもいられず、自分の考えを書き起こしてしまった。

東電は、これまでも、明確なデータが得られるまで事態の深刻さを認めないという傾向にあり、今回の「炉心溶融はしたけど安定している」という発表にも同じニオイを感じている。

データからの推測に過ぎない話をあたかも事実のように語り、最も楽観的な想定ケースをたった一つだけ示すようなことをしてきた東電。しかも、それが間違えているのだから始末が悪い。本来ならば、最悪ケースを含めて、他にもいくつかの想定ケースとその対策を用意しておくべきなのである。

そうしていたなら、穴ぼこだらけの格納容器に注水し、汚水を垂れ流すだけ垂れ流すという愚挙も避けられたのではないか? 当初から「水棺」に反対する専門家もたくさんいたはずだ。

「穴はあいているが小さなものだ」という見解も、現実的に考えれば矛盾した話であり、私が示したような最悪ケースも考えるべきだろう。私以外にも、溶融した燃料の大部分が格納容器に落下していると指摘する専門家(私は専門家じゃないけど)も少なからずいるわけだし、彼らの声にも耳を傾けなくてはならないと思う。

もちろん、そうならないことを願うのみだが、今のまま事態が進行すれば、また最悪ケースが拡大しそうな、嫌な予感が止まらない……。


Twtools(つぃつーるず)

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