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2011年5月11日水曜日

「魔法少女まどか☆マギカ」と原発をこじつけてみた(物語編)


(まだ見ていない方は、ネタバレ注意)

東日本大震災において、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

前回のエントリーでは、「魔法少女まどか☆マギカ(以下「まどマギ」と記す)」の世界におけるエネルギーシステムと核燃料サイクルの共通点について、設定の面から以下のようにこじつけてみた。

  • 魔法少女=原発の街
  • ソウルジェム=原子力発電所、または原子炉
  • 「祈り」のエネルギー(魔法力)=日々生活に使用する電力
  • 魔女=原発に絡む不都合なリスク(使用済核燃料、原発事故)
  • グリーフシード=安全神話、プルトニウム
  • 「呪い」のエネルギー(エントロピー対策)=高速増殖炉により生み出される未来エネルギー
  • 素質を持った少女=海辺に近く、人口密集地から離れた好立地の自治体

今回は、前回導き出した設定を踏まえた上で、キャラクターの言動を追いながら、ストーリーにおいてどのような共通点があったのか、こじつけていきたい。

(注:あくまでもこじつけです。)

1〜3話

物語の序盤において、主人公鹿目まどかとそのの友人美樹さやかは、キュゥべえ(以下「QB」と記す)と出会い、「魔法少女にならないか?」と契約話を持ちかけられる。子どもの頃にアニメで見たような、夢のようなおとぎ話。しかも、なんでも願い事を一つ叶えてくれるという。

真面目な二人は、先輩魔法少女である巴マミの勇敢さに憧れ、願い事などよりも魔法少女になって魔女から人々を救いたい、誰かの役に立ちたいという想いに駆られる。マミは、魔法少女になることの危険さを二人に説明しつつも、仲間が増えることを歓迎し、そうなるように誘導していた。そして、二人は危険と知りつつも、QBとの契約を前向きに考えていた。

しかし、謎の魔法少女である転校生の暁美ほむらは、二人が契約することに断固として反対し、説得を試みる。

それは、彼女が、転校当日、まどかに対して語った次の警告に集約されている。

あなたは自分の人生が、尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?だったら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね。さもなければ、全てを失うことになる。

後から明らかになることだが、ほむらは「時間遡行者」。未来からやって来た、全ての悲劇を知る人物である。どんな結末が待っているかわかっているから、手段を選ばずまどかたちが魔法少女になることを阻止しようとする。

これを原発問題とこじつけるなら、未来の世界で大事故を経験し、極端な原発反対論者になった人物が、タイムスリップしてやってきたようなものである。どんな理由があろうとも、新規に原発を建てることなど許さないという立場だ。

そして、3話目にして最初の“事故”が起きた。マミが、魔女との戦いの中で命を落としてしまったのだ。

4〜9話

マミの死を目の当たりにして、二人の「魔法少女になりたい」と思う気持ちは途端に萎えてしまう。マミから説明を受け、魔法少女のリスクは理解しているつもりだったが、いざそれが現実のものになると、恐怖に打ち克つことは難しかった。

しかし、さやかは、好意を寄せている男子の怪我を直したいという強い「希望」があったため、まどかに黙って一人だけQBと契約を結んでしまう。

これは、交付金や雇用などの経済的な恩恵を望み、ある程度のリスクを覚悟して原発を誘致する自治体の発想に近い。

このことについて、ほむらは次のような辛辣な言葉を残している。

一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんて無い。あの契約は、たった一つの希望と引き換えに全てを諦めるってことだから。

この時点では、まどかもさやかもその言葉の意味をよく理解していなかったはずである。マミの死は、たまたま運が悪かったせいで慎重に行動していれば回避できた、くらいに考えていたのではないだろうか。

しかし、第6話で二人は根本的な認識違いを思い知らされる。

QBの“巧妙な手違い”により、マミの後任として呼ばれた魔法少女の佐倉杏子。彼女とさやかが、価値観の対立から決闘を始めようとしたその瞬間、まどかはそれを制しようとして、さやかのソウルジェムを陸橋から投げ捨ててしまう。それは、トラックの荷台に載せられて遠くへ運ばれ、しばらくするとさやかは絶命してしまう。

QBは、魔法少女の本体はソウルジェムであり、肉体は外付けのハードウェアでしかなく、100メートル以上離れるとコントロールが効かなくなって停止してしまう、と言う。そして、普段は肌身離さず持ち歩いているものだから、こういう事故は滅多に起きない、と弁明した。

事故の原因を「想定外」で片づけようとする、東京電力のような弁明だ。

その後、さやかに問いつめられ、QBは次のような言い訳をした。

僕は「魔法少女になってくれ」ってきちんとお願いしたはずだよ。実際の姿がどういうものか、説明を省略したけれど。

やがて、さやかは破滅の道へと向かい、最後はソウルジェムに穢れが溜まって魔女に変容してしまう。演出面から考えると、さやかの心に膨らんでいった恨みや憎しみがソウルジェムを濁らせ、破滅的な結末を呼び寄せた、と考えるのが正しい。しかし、冷めた見方をするなら、ソウルジェムから穢れを抜き取るというメンテナンスを怠ったために起きたヒューマンエラーと考えるのが妥当だ。

さやかが魔女に変容した後、まどかは部屋で一人うなだれ悲しみに暮れていた。そこへQBが現れ、自ら真の目的を語り出す。

勘違いしないで欲しいんだが、僕らは何も人類に悪意を持っているわけじゃない。全ては、この宇宙の寿命を延ばすためなんだ。まどか、君は「エントロピー」っていう言葉を知ってるかい? 簡単に例えると、焚き火で得られる熱エネルギーは、木を育てる労力と釣り合わないってことさ。エネルギーは、形を変換するごとにロスが生じる。宇宙全体のエネルギーは、目減りしていく一方なんだ。だから、僕たちは、熱力学の法則に縛られないようなエネルギーを探し求めてきた。そうして見つけたのが、魔法少女の魔力だよ。
とりわけ、最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の希望と絶望の相転移だ。

QBは、宇宙のエネルギー問題を解決するために、少女を魔法少女に変身させ、その魔力を回収していた。しかも、本当に重要なエネルギーは、奇跡を起こす「希望」ではなく、呪いを生み出す「絶望」の方だと言う。

これは、原子炉で発電される電力そのものよりも、その使用済燃料から抽出されるプルトニウムの方が重要という核燃料サイクルの仕組みに似ている。プルトニウムはウランと混合されMOX燃料になり、高速増殖炉という夢の発電システムに使用される。

高速増殖炉は、通常の原子炉(ウラン燃料を使った従来の核分裂路)よりも遥かに効率のよい発電方法だが、その運用はとても難しく、危険を伴うものである。そのため、未だに実用の目処が立っていない(実現可能のような口ぶりだが、当面不可能との見方が強い)。

ただし、危険度で言えば魔法少女のエネルギーシステムの方が一枚上だろう。魔女が暴れ出すことにより一般人の生命を危険に晒すのは原発事故が起きる場合と同じだが、こちらのシステムでは100%確実に事故が起こる(=魔女になる)からである。

QBも、その辺は包み隠さず、露骨な表現でまどかに伝えている。

この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて。待ってるからね。

巷ではQBを敏腕営業マンのように賞賛する声もあるけど、こんなこと言ってたら絶対に契約取れないと思う…。

ここで、QBについて考察してみたい。

QBとは、本当の名前を“インキュベーター(孵卵器)”と言い、宇宙からやってきた知的生命体である。有史以来人類に関わってきたというから、もう何万年も生き続けていると予想できる。ほむらが度々殺害を試みるが、蜂の巣になったり爆発したりしてもすぐに復活する。

人類が、それぞれ別個の感情を持ちながら共存していることに驚いたと言っていることから、別の個体同士で感情を共有していると考えられる。そう考えると、決して不死身の生物というわけではなく、一つの個体が死滅するとすぐに別の個体が出てきて感情も記憶も引き継いで任務を継続しているようにも思える。

QBの任務とは、前述を繰り返すようだが、素質のある少女と契約し、魔法少女を生み出すことである。魔法少女はやがて魔女になり、QBは、その際発生する莫大な「呪い」エネルギーを回収する。そのエネルギーは、エントロピーの法則により減衰した宇宙エネルギーの回復に使われる。

こうしてQBの任務について考えると、原発における“ムラ”の存在を連想すると思う。政官産学が一体となって、原発産業を推進する一連のネットワークである。

具体的には、次のようなつながりを意味する。

  • 政=電力業界から献金を受けたり、原発誘致で恩恵が与えられる政治家
  • 官=電力業界に天下りを約束されている経済産業省などの官僚(逆に電力業界から政府機関に再就職するケースもある)
  • 産=電力業界を中心とした地域の経済団体
  • 学=電力業界から資金援助を受けている大学などの研究機関

マスメディアなども利用しつつ安全な原発をPRし、事故や不祥事を起こしてどれだけほころびを見せても、すぐにほとぼり冷まして復活するタフさ。言葉巧みに少女を誘い魔法少女の契約を結ばせ、殺しても殺しても生き返るQBを彷彿とさせる。

ただし、QBと原発ムラとでは、その動機が根本的に違う。

“原発ムラ”が、世間一般で語られるように利権を目的としたネットワークであるなら、それに対して、QBの目的はもっと純粋で、宇宙を救うという大義のみで活動している。一切の欲望もなければ、ウソも無い。ただ、意図的にちょっと説明を忘れてしまうのだけれど。

しかし、その思想というか、哲学というか、態度について、両者は酷似している。

今現在で69億人。しかも、4秒に10人ずつ増え続けている君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?

親友のさやかが魔女化してしまい、悲しみに暮れて不信感を募らすまどかに対し、QBが言い放ったこの台詞は、最もQBらしい台詞だったと思う。たくさんいるんだから、一人くらい死んだっていいじゃないか、と。

原子力を擁護・推進する人たちの中で、これと似たような論調で語る人は少なくない。例えば、原発のリスクについて、交通事故の死亡者数や炭坑作業者の死亡率を引き合いに出して論じる意見がある。過去に起こったあらゆる原発事故よりも、交通事故や炭坑作業中に亡くなった人の方が多いから、原発の方が安全、というわけだ。最近では「ユッケの方が危険」という話も聞こえてくる。

確かに、今回の原発事故で、放射線被曝で亡くなった方は、今のところ一人もいない。しかし、被害の深刻さを量る場合、単に死亡者数だけで比べるのは妥当なのだろうか?

今回の事故では、原発周辺の住民は避難を余儀なくされた。着の身着のまま、田畑や家畜、そして津波で行方不明になった家族を残し、原発の半径20km圏内から退避しなくてはならなかった。

これは、原発から放出される放射性物質から身を守るためであり、逆に言えば避難をしなければ生命を危険に晒していたということである。放射線の害については、諸説云々あるが、十分な疫学データも無いような現状においては、避難は妥当な対応と言えるだろう。危険とも安全とも断定できない状況においては、危険と判断して行動するしかない。

その結果、幸いにも放射線を原因とした犠牲者は、これまでのところゼロに抑えることができている。しかし、地元住民にとっては、とても「幸い」などと言える状況ではなさそうだ。

この先何ヵ月間自宅に戻れないかもわからず、ひょっとしたら事態の収束には数年間かかる可能性すらある。そうなれば、農業、畜産業それから漁業は、間違いなく壊滅してしまう。事故収束後、奇跡的に復旧したとしても、風評被害の影響は長期に及ぶことが予想される。

家屋も、地震と津波に壊されたまま放置状態だ。震災と津波で亡くなった方々のご遺体も、防護服に身を包んだ警察や自衛隊が懸命の捜索を続けているが、発見されても放射能汚染が激しいため、遺族に引き渡すことが難しいという。また、想像したくはないが、原発事故が原因で救出が遅れ、命を落とした方も少なくはないはずである。

そうした状況の中、避難所の被災者からは、悲痛な声が聞こえてくる。80歳は過ぎていようお年寄りが「(太平洋戦争の)戦地の地獄を経験したが、今の方がひどい」と語っていたのは印象的だった。

少なくとも住民生活は完全に破壊され、街は死んでしまったも同然と言える。

もし、この状況を見て、“死人が出てないからたいしたことない”と言う人がいるなら、被害者の前でもそう言ってみてもらいたい。まあ、QBは面と向かって言っちゃったわけだけど。

ちなみに、そんなQBに対するまどかの反応は、こうだ。

そんな風に思ってるなら、やっぱりあなた、私たちの敵なんだね。

とはいえ、QBは、何から何まで間違ったことを言っているわけではない。むしろ、理屈の通った正論を語っていると言えなくもない。まどかはQBに対して「騙した」と激しく非難するが、QBはため息まじりに反論する。

騙すという行為自体、僕たちには理解できない。認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、なぜか人間は他者を憎悪するんだよね。

女性関係でモメた時などに使ってみたい言葉だ。たぶん、殺されるけど。

また、終盤近くになると、QBは人類を家畜に例えてこんなことも言っている。

彼ら(家畜)は人間の糧になることを前提に、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している。牛も豚も鶏も、他の野生動物に比べれば、種としての繁殖ぶりは圧倒的だ。君たちは皆、理想的な共栄関係にあるじゃないか。

人間を家畜に例える時点で常識的には受け入れられない話ではあるが、一応理屈は通っている。

また、歴代の魔法少女たちが、さやかと同じく「呪い」のエネルギーに呑まれて魔女化し、悲惨な最期を遂げたことについても、こんな風に語った。

彼女たちを裏切ったのは僕達ではなく、むしろ自分自身の祈りだよ。どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかのゆがみを生み出すことになる。やがてそこから災厄が生じるのは当然の摂理だ。そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも、願い事なんてすること自体が間違いなのさ。でも、愚かとは言わないよ。彼女たちの犠牲によって、人の歴史が紡がれてきたこともまた事実だし。

「原発を批判するなら電気を使うな」という理屈に非常に近いが、あながち間違っているとは言えない。私たちが条理にそぐわない電力の恩恵を受けた分、原発事故という災厄を生み出したというのも一理ある話ではある。電力供給という意味では何の恩恵も受けていない福島県を中心に災厄が降り掛かり、東京で電力を浪費している私たちがたいして被害を受けていないという現実。QBよりも、私たちの方がよほど理不尽なようにも思えてくる。

QBは、さらにたたみ掛けるように言う。

そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ。それを正しく認識するなら、どうして今更たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?

QBには、一人一人の人間の尊厳などという概念が存在しない。なぜなら…

僕達の文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった。だから、君たち人類を発見した時は驚いたよ。全ての個体が、別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね。

一方、まどかは、QBの感情に訴えかけようとした。

ずっとあの子たちを見守りながら、あなたは何も感じなかったの? 皆がどんなに辛かったか、わかってあげようとしなかったの?

当然、両者が理解し合えることはない。

これは、原発問題に際して「経済至上主義」の下に原子力推進を訴える人々と、「極端な感情論」の下に反原発を訴える人々が決して相容れないことに似ている。

QB話が長過ぎた。

話を元に戻すと、魔女になったさやかは、結局、魔法少女杏子の手により、心中するように消滅することになる。

(注:あくまでもこじつけです。)

10〜11話

第10話は、暁美ほむらが過去を回想する回である。過去と言っても、彼女は同じ時間を何度も遡行しながらやり直しているので、今までくぐり抜けてきた並行世界の体験の回想。そこにはいくつもの未来の可能性があったけれど、どの結末も魔法少女にとって不幸なものだった。

入院生活の長かったほむらは、復学してもどこか浮いていて友達ができずに寂しい想いをしていた。そんな心の隙間をつけ狙うかのように、魔女が彼女を襲った。すでにQBと契約していたまどかは、魔法少女に変身して間一髪のところほむらを救う。それから、まどかは、ほむらの唯一無二の友達になった。しかし、まどかは最強の魔女“ワルプルギスの夜”との戦いに敗れ、命を落としてしまう。

ほむらは、まどかとの出会いをやり直し彼女を守るために、QBと契約し魔法少女になった。

時間を操る力を身につけたほむらは、過去に戻り、まどかと共に魔女と戦う。しかし、何度過去をやり直しても“ワルプルギスの夜”に敗れ、勝ったとしてもまどかが魔女に変容してしまう未来しか待っていないことを知る。そして、それがQBの目論見であることに気づく。

その事実を他の魔法少女に伝え、最悪の事態を回避しようと奔走するが、どうしても最後にまどかが魔女化する結末を変えることができなかった。

まどか、たった一人の私の友だち。あなたのためなら、私は永遠の迷路に閉込められてもかまわない。

ほむらはそう決意して、まどかと出会う前の過去へと再び時間を遡った。

ここでのポイントは、ほむらが「まどかを救う」というたった一つの願望だけを優先し、他のことなど全く考えていないことである。他の魔法少女のように魔女を倒すことにも、そこからグリーフシードを手に入れることにも執着しないし、宇宙エネルギーを補うというQBの使命にも関心がない。とにかく、まどかが魔法少女になることを阻止し、救い出すことだけを考えている。

これは、電力不足など全く考えず、感情に任せて原発に反対する過激な運動家の発想である。とにかく原発を潰せ、と。

ただし、彼女は魔法少女の仕組みを熟知し、その悲惨な結末を知っている点で、そんじょそこらのニワカ原発反対派とはわけが違う。具体的に何が危険で、どうすべきかを理解している。そして、何より決してあきらめない。

似たような信念の下で、原発問題に立ち向かっている人物が実在する。ネット上では何かと話題の、京都大学原子炉実験所小出裕章助教である。

小出氏は、1960年代の後半に東北大学工学部原子核学科に入学し、原子力工学を学んだ。これからは原子力の時代と考えていたが、学べば学ぶほどそれが間違いだと思うようになり、途中から原発に反対する立場を取るようになった。以後、一貫して原発を廃絶するための研究を続けている。

「みんな、QBに騙されている!」と気づき、魔法少女の仕組みに逆らい続けたほむらと共通する想いがあるように感じられる。「あんなオッサン(失礼)と一緒にするな!」とほむほむファンに殴られそうだが。

もっとも、小出氏は、ほむらが宇宙エネルギーの枯渇を無視したように、電力不足を全く考慮しないわけではない。日本の電力事情を調査した上で、全ての原発を停止しても電力不足には陥らないという試算を出している。本当かどうかは不明だが。

しかし、彼の話聞く限り、たとえ電力不足に陥ろうとも、原発を全廃すべしという意見を変えることはないだろう。科学的知見から、いかなる理由があろうとも、原発が存在してはならないと考えているからだ。

結局ほむらは、またしてもQBの策謀に嵌められ、共闘するはずだった杏子を失い、単身“ワルプルギスの夜”と戦うことになる。勝算などほとんど無いが、まどかを守るというたった一つの願いを叶えるために、最後の決戦に挑んだ。

繰り返せば繰り返すほど、あなたと私が過ごした時間はずれていく。気持ちもずれて、言葉も通じなくなっていく。たぶん、私は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う。あなたを救う。それが私の最初の気持ち。今となっては、たった一つだけ最後に残った道しるべ。わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、あなたを私に守らせて。

(注:あくまでもこじつけです。)

最終話

またしても“ワルプルギスの夜”に敗れ、ほむらは万策尽きて全てを諦めかけていた。助けに駆けつけたまどかは、ついにQBと契約して魔法少女になってしまう。まどかの願いは、「全ての魔女を生まれる前に消し去りたい」という内容。自己犠牲の下に世界を救う、という感動的な展開だが、ストーリー的にはかなりご都合主義とも言え、この辺が視聴者の間で賛否が分かれた理由かもしれない。

個人的には、壮大で悲惨なストーリーの決着として悪くない最終回だったと思う。どうあっても救われない世界を、主人公が不条理な奇跡で解決する。それは、逆に言えば物語を未解決のまま終わらせるようなものでもあり、視聴者への問題提起にもなっていたと思う。(問題提起ってほどではないか。)

このことについて、本作の脚本を担当した虚淵玄氏はインタビューで次のように語っている。

「夢のエネルギー」と言われているものも、結局は色々な対価やリスクがあるんだろうと思います。かつて原子力がそう思われていたようにね。でもだからと言って、危険なその力をただ否定し封印してしまうのは、自分は間違いだと思う。折り合いを付ける方法がいつかどこかにあるはずだと、探し続ける努力を怠っちゃいけない。道を探ることを止めちゃったら、それまでにあった悲劇や犠牲すら無駄になってしまう……と思うんです。http://nano.g.hatena.ne.jp/ext3/20110328/p1

待て待て待て、話が変わってきた。なんと、虚淵氏は元々原発を意識して「まどマギ」を書いた臭い。しかも、このコメントを読む限りでは、原発を肯定する考えのようだ。ただし、このインタビューは3月11日以前に書かれたものである。深刻な原発事故が起きた今となっては、「かつて原子力がそう思われていたように」ではなく、現在進行形で「思われている」ことを指摘しておきたい。

しかし、このインタビューから明らかなのは、最後に奇跡を起こしたまどかを原発に例えて言うならば、悲劇や犠牲の上に完成した安全無害なスーパー原子炉(完成形の高速増殖炉?)、もしくは何万年も保管しなくてはならない使用済核燃料を一瞬で安定化してしまう奇跡の廃棄物処理システムということになる。

希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、あたし「そんなのは違う」って、何度でもそう言い返せます

そうすると、この台詞も“安全な原発が不可能だなんて言われたら、あたし「そんなのは違う」って、何度でもそう言い返せます”ってことに?

(注:あくまでもこじつけです。)


長くなってしまったので、まとめは次のエントリーで。



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