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2011年5月10日火曜日

「魔法少女まどか☆マギカ」と原発をこじつけてみた(設定編)

(まだ見ていない方は、ネタバレ注意)

東日本大震災において、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

3月11日(金)、前日に関西の毎日放送で放映された「魔法少女まどか☆マギカ(以下、「まどマギ」と記す)」の第10話が「神回」との情報が、ネタバレとともに伝わり、関東の“まどマギ”ファンはその夜の放送を今か今かと待ちわびていた。

しかし、その日の午後、東日本は史上最悪の震災に見舞われた。宮城県は最大震度7の激震。大津波は、おびただしい数の人命と家財を奪い、東北三県を中心に未曾有の大災害となった。

そして、原発事故。「絶対安全」とうたわれていた原子力発電所は、地震の衝撃と想定を上回る津波の前に、その機能を完全に失い、制御不能となった。度重なる水素爆発により、大量の放射性物質を大気や土中、海洋に漏出させ、今も収束の目処が立っていない。

一方、「まどマギ」は、それから何週間経っても放送されない事態に陥った。「ひょっとしたら永久にお蔵入り」という噂まで聞こえていた。

ネット配信された第10話を見て、その理由がよくわかった。この作品の最終決戦である「ワルプルギスの夜」の描写、正確に言うと、決戦後の光景が、津波被害に遭った町並みそのものだったからだ。雪もちらついていたし。

当時関西でも未公開だった11話と12話にも、同様の災害描写があり、主人公のまどかとその家族が避難所に身を寄せるシーンも、実際の震災被災地を想起させるものだった。

結局、10〜12話一挙放送という形でこの作品の最終回が日の目を見たのは4月22日。本来の放送日から実に1ヵ月以上経ってからのことである。

その内容は、衝撃と感動が詰まっていて、アニメ史、いや日本のエンターテイメント史に残る傑作だったと思う。特に、ほむほむがほむほむでほむほむなところは、マジほむほむだったと言えよう。

しかし、大きな震災を目の当たりにした後で、私の心境はすっかり変わってしまっていた。台詞一つ一つをとっても、見たのが震災前だったなら、おそらく違う印象で受け取ったと思われるものが多い。

例えば、最終話でまどかがマミに語った台詞。

希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、あたし「そんなのは違う」って、何度でもそう言い返せます。

震災によって、被災地のみならず、日本全体が深いダメージを負っていて、誰もが「しかたがない」とネガティブな気持ちになりがちな状況おいて、この台詞はとても深く沁み入り勇気を与えてくれるものだった。

そして、宇宙のエネルギーを絶やさないために少女たちが犠牲になるという「まどマギ」の世界観は、事故を起こし被災地にいっそう大きなダメージを与え続けている原子力発電所の問題を想起せずにいられなかった。「こじつけ」と言われようとも、私の中で、この二つはどうしようもなく繋がってしまったのだ。

「まどマギ」におけるエネルギーシステム

「まどマギ」は、“キュゥべえ(以下「QB」と記す。)”と呼ばれるマスコットキャラ的宇宙生物が、素質のある少女を見つけ出し、願い事を一つ叶える代わりに魔法少女になってもらうという、アニメの世界ではよくあるファンタジーな物語である。主人公のまどかとその友人のさやかは、QBにその素質を認められ、言葉巧みな勧誘で魔法少女になる契約を迫られる。

魔法少女になるということは、少女の肉体から魂を抜き出し、ソウルジェムという宝石に変換すること。そうすることにより、本来の肉体は抜け殻となり、外付けのハードウェアのような存在になる。つまり、生命を失った肉体を、魂の本体であるソウルジェムから操ることになるのだ。まどかたちに先んじて魔法少女になっていた杏子は、この事実を知り、「ゾンビと同じ」と表現している。

そして、人間に悪さをする魔女と戦うことが義務づけられ、場合によっては命を落とす(魂を失う)危険にさらされる。まどかとさやかが尊敬する先輩魔法少女のマミも、魔女に頭から食われ、二人の眼前で惨殺されている。

魔女を倒すと、グリーフシードと呼ばれる卵が残される。ソウルジェムは、魔力を使ったり負の感情を抱く毎に穢れていくのだが、グリーフシードを手に入れ、その穢れを吸い取らせることにより浄化できる。ソウルジェムの穢れを吸い取った分、グリーフシードは穢れが溜まって危険な状態(孵化して魔女が生まれる)になる。QBは、危険な状態になったグリーフシードを食べて、これを処分する。

グリーフシードが手に入らず、ソウルジェムの穢れを浄化しきれなくなった場合、ソウルジェムは崩壊してグリーフシードに変化、魔法少女は魔女に変身してしまう。これは、「希望」が「絶望」に、「祈り」が「呪い」に変化することを意味しており、QBによると、この時莫大なエネルギーが発生、“エントロピーの法則”に基づき目減りした宇宙のエネルギーを回復させるという。

「まどマギ」の中で一括りに“感情エネルギー”と呼ばれているものは、実は二つの要素に分けられる。一つは、魔法少女が「希望」とともに手に入れた魔法力。これを「祈り」のエネルギーとする。もう一つは、「希望」が「絶望」に転じる時に発生し、エントロピーを凌駕して減衰した宇宙エネルギーを回復させる「呪い」のエネルギーだ。

QBが最終的に回収したいエネルギーはこの「呪い」エネルギーであり、魔法少女たちが手に入れた「祈り」のエネルギーは特に必要としていない。あくまでも、魔法少女が魔女を倒すためのエネルギーである。

核燃料サイクルの仕組み

一方、我々人類が築き上げてきた、原子力発電を起点とする核燃料サイクルは、まず原子炉で燃料のウランに中性子を吸収させ、核分裂反応を起こし熱エネルギーを得る。その結果生じる使用済み核燃料の中から、1%ほど含まれるプルトニウムを取り出し、ウランと混合してMOX燃料を作る。

MOX燃料は、効率の良い核燃料として高速増殖炉で使用することを目標にしているが、現状では実用化の目処が立たず、使用済核燃料とそこから抽出したプルトニウムが行き場を無くして処理方法に困っている。苦肉の策としてMOX燃料をプルサーマル炉で燃焼させているが、処分の観点からはほとんど効果が無く、原子炉の危険性をいたずらに高めているという指摘もある。

プルトニウムは、強い放射線(α線)を放出するため、内部被曝すると肺ガンを罹患する危険性が指摘されている。

両者の共通点をこじつける

簡単に言ってしまうと、両者の共通点は、エネルギー確保のために破滅的なリスクを伴うという点である。

まどマギでは、「祈り」のエネルギーを生み出し使うための見返りとして、結果的に魔女という「呪い」を生み出すことになる。これは、原子炉で電力を生み出すために使用済核燃料が生成されるのに似ている。使用済核燃料から抽出されるプルトニウムは、有害だが高速増殖炉を稼働させる燃料でもあり、日本のエネルギー問題を解決する切り札になるという一面を持つ。QBが「呪い」エネルギーを回収して宇宙のエネルギー問題を解決しようとしているのと似ている。

その原子炉や使用済核燃料が近隣住民の害にならないように管理する発電所や自治体は、さしづめ魔法少女と言ったところだろう。発電所の建造物そのものや職員は、事故を起こさないように万全の努力をし、事故になった際も全力でこれに対処する。電力会社と契約し、発電所を誘致した自治体も、当然に安全運用の責任を負い、一体になってその活動を支えていくことになる。

仮に、住民にその意識が無いとしても、誘致に際して交付される補助金や税収増、雇用創出という恩恵を受け、その街で生活している以上は一蓮托生、運命を共にしていると言わざるを得ない。

これは、魔法少女が、魔女の正体を知らない状態で、その退治を義務づけられていることに近い。

(注:あくまでもこじつけです)

魔法少女とソウルジェム

「魔法少女」とは、発電所を含めた自治体そのもの、すなわち「原発の街」と位置づけられるだろう。そうすると、魔法少女の本体である「ソウルジェム」に該当するものは何だろうか?

QBから十分な説明を受けなかった魔法少女たちは、当初ソウルジェムを魔法少女に変身するための小道具だと考えていた。しかし、第6話で、さやかのソウルジェムが肉体から離れる事故が起きたことにより、ソウルジェムこそ魔法少女の本体であり、肉体は外付けのハードウェアでしかないことを知る。

一方、原発の街ではどうだろうか。市民にとって、当初、原発とは富と恩恵を与えてくれる存在で、雇用を創出し、生活を豊かにしてくれるものだった。「街のために原発が必要だ」として誘致したはずである。しかし、実際はどうだろう。街の中心は市民生活ではなく原発そのものになっているのではないか。「街のための原発」であるはずが、「原発のための街」になってしまっている可能性。原発事故により人が立ち入れなくなってしまった街は、それを証明しているように思う。

したがって、原発の街にとって、ソウルジェムとは原発そのもの、もしくは原子炉に相当すると言える。

(注:あくまでもこじつけです)

魔女とグリーフシード

「魔女」とは、魔法少女が「祈り」エネルギーを使い果たした後で「呪い」エネルギーを発して生まれ変わる怪物である。魔法少女たちは、そのことを知らずに、日々この魔女を退治し続ける。魔法少女が魔女を退治すると、そこには魔女の卵である「グリーフシード」が残される。このグリーフシードによりソウルジェムは浄化され、魔法少女は魔力を維持し、魔女への変容を防ぐことができる。

ここは、こじつけがかなり難しかった。

魔法少女を「原発の街」に例えた以上、魔女とはその変容した形、つまり、事故が起きて放射性物質をバラまいている原発を表すのだろうか。酷い事故が起れば、街に立ち入ることは不可能になり、実質ゴーストタウン、すなわち死んだ街になってしまう。まさしく“魔女化した”というイメージに合致する。

しかし、QBが魔法少女の魔女化を目的に契約を交わしていることを考えると、原発事故と魔女を同一視するのはつじつまが合わない。魔女からは「呪い」エネルギーが手に入るが、原発事故からは何も手に入らないからだ。

一方で、「呪い」エネルギー=プルトニウムという解釈を元にすると、「魔女」は、プルトニウムを生み出すもの、すなわち使用済核燃料とすることもできる。ただし、その場合は、“やがて魔女になる魔法少女”という存在が、すなわち核燃料ということになってしまう。これでは魔法少女が魔女を倒すということの意味が通らなくなる。プルサーマルでプルトニウムを燃焼処分するとか、ある意味魔女を倒すようなイメージだが、話としてはあまり面白くならない。だからどうした、という話になってしまう。

そこで、ここは無理に一つにまとめず、「魔女」に「原発事故」と「使用済核燃料」の二つの意味を持たせることにする。ひとまとめにすると、原発運用のかかる「不都合なリスク(ただしプルトニウムを抽出できる)」という形に集約できるが、そこまで抽象化してしまうと、これまたわけがわからないので、あえて矛盾を含んだまま話を進めたい。

そうすると、「グリーフシード」の定義もまた曖昧なものになってくる。魔女を倒した後でソウルジェムを浄化するという特性を考えると、事故を収束させた後に復活する「安全神話」がこれに当たるだろう。事故を短期で収束させ、被害を軽微に見せれば、むしろ原発の安全性をアピールすることができるという意味で。一方、魔女を使用済核燃料に仮定すると、そこから抽出されるという意味では、これこそ「プルトニウム」に相当すると考えられる。「グリーフシード」も、「魔女」同様に、二つの意味を持たせておきたい。

では、“魔法少女が魔女を倒す”、とは、いったい何を意味するのか。

「魔法少女」は発電所を含む自治体、すなわち「原発の街」に相当し、原子力の有用性を信じて一心不乱に原発を運営・推進していく立場にある。しかしながら、その中では、当然「原発事故」や「使用済核燃料」などの「不都合なリスク(=魔女)」も表面化するだろう。

「原発の街(=魔法少女)」は、そのような問題を解決し、ネガティブな印象を払拭しなくてはならない。なぜなら、原発事業が滞れば、街の経済は停滞し、雇用も失われるからである。使用済核燃料は、冷却後に粛々と処理施設に運ばれ、原子炉は、多少の事故が起こっても収束後は何事も無かったかのように危険性を否定、もしくは容認されることになる。

このように、表面化する「不都合なリスク」を解決(もしくは隠蔽)することが、“魔法少女が魔女を倒す”ということに他ならない。その後に残るのは、「安全神話」と「プルトニウム」、すなわち「グリーフシード」なのである。

(注:あくまでもこじつけです)

さあ、かなり無理が出てきたが、あくまでもこじつけなので、このまま強引にまとめることにする。

  • 魔法少女=原発の街
  • ソウルジェム=原子力発電所、または原子炉
  • 「祈り」のエネルギー(魔法力)=日々生活に使用する電力
  • 魔女=原発に絡む不都合なリスク(使用済核燃料、原発事故)
  • グリーフシード=安全神話、プルトニウム
  • 「呪い」のエネルギー(エントロピー対策)=高速増殖炉により生み出される未来エネルギー

また、魔法少女になる前のまどかやさやかは「素質を持った少女」と呼ばれていたが、これは立地条件の話に該当する。海岸線に近く、人口密集地から離れた自治体にだけ「原発の街」になる資格が与えられている。


今回は(多少無理はあるが)設定をこじつけたので、次回は、この設定を前提にしてストーリーをこじつけていく。

乞うご期待!

(注:あくまでもこじつけです)




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