Twtools(つぃつーるず)

2011年7月6日水曜日

【Twtools】「統計情報」機能を追加しました

Twtools(ついつーるず)のユーザーパネルに「統計情報」機能を追加しました。

なかよしチェッカー」のユーザーアイコンをクリックすると、ユーザーパネルが表示されます。

パネルの左上にある「統計情報」タグをクリックしてみてください。そのユーザーの1週間分のタイムラインを分析し、各種統計情報が表示されます。


機能概要

登録日時
Twitterに登録した日時とそれから経過した日数を表示します。
この1週間のツイート数
直近の1週間のツイート数をカウントします。
1日あたりの平均ツイート数
直近の1週間における1日の平均ツイート数を表示します。
この1週間の公式RTの数
直近の1週間における公式RTの数を表示します。
この1週間の@の数
直近の1週間における返信(@、非公式RTを含む)の数を表示します。
この1週間のツイートした時間帯
日曜から月曜までのツイート数を2時間単位で区切り、時間割のように分類して集計します。
この1週間で多かったワード
「この1週間で多かったワード」をクリックすると、ツイートの内容を解析し、上位20位までのランキング表が表示されます。

個人的に面白いと思うのは、「この1週間のツイートした時間帯」で、その人のライフスタイルがわかってしまうということです(ただし、ある程度のヘビーユーザーに限る)。例えば、私がツイートした時間帯は以下の通り。



…生活のリズムがメチャクチャです><。徹夜の日も混じってるし。

「この1週間で多かったワード」も、見方によっては面白いと思います。私はこの1週間、「Google+」についてツイートすることが多かったのでこのような結果になったようです。恥ずかしいツイートが多い人は、注意すべきかも知れません。Twtoolsがどうこう以前の問題だと思いますが(笑)



ちなみに、パネルのフッターに出現するAmazon広告は、1〜5位までの頻出ワードを参考にして表示しています。あまり精度が良くないので、個人的には「メイビーウィッシュリスト」と呼んでいます。贈り物の際に、参考にされてはいかがでしょう。需要ないか。

単語の抽出とカウントには、Yahoo!デベロッパーネットワーク日本語形態素解析APIを利用しました。

今後の予定

現状、自分のアカウントに対してこの機能を利用することはできません。ユーザーIDをパラメーターで指定できるような機能を準備中です。

また、「この1週間で多かったハッシュタグ(#)」の機能も追加する予定です。

あとは、「この1週間のツイートした時間帯」で、今のところ公式RTを含まないカウントをしているのですが、何らかの形で、公式RTの回数もカウントしようと考えています。ほとんど公式RTしかしない人もいるみたいなので。

注意事項

  • この機能は、APIによってアクセスする外部システムに大きく依存しています。したがって、あまりにツイート数の多いユーザーについて調べた場合や、アクセス先のシステム状況によっては、稀にエラーが発生する場合があります。その場合は、お手数ですが、再度「統計情報」をクリックしてください。
  • 同様の理由で、TwitoolsのWebサーバーがタイムアウトする場合があります。その場合、“500 Internal Server Error”というメッセージが表示されますので、同様に、再度「統計情報」をクリックしてください。
  • TwitterのAPI利用制限により、集計できるタイムラインの上限は3200件になります(公式RTも含む)。そこまでたくさんツイートしている方は滅多にいませんが、上限を超えた場合は、取り扱いデータが1週間に満たない場合があります。
  • タイムラインをブロックしているユーザーに対しては、この機能はご利用いただけません。


この機能は、「リムられチェッカー」リムーブチェッカー」でも同様にご利用いただくことが可能です。


Twtools(つぃつーるず)

2011年5月27日金曜日

福島第一原発のメルトダウンについて、ヤバいことを考えてしまった

またWebと関係ないことですが、福島第一原発のメルトダウンについて書きます。

「知ってた」って言われるかもしれないけど、ちょっとヤバそうなことを思いついてしまったので。

前もって言っておくと、私は原子力の専門家ではありません。話の内容は、半分いや三分の一くらいで受け止めてください。


今月12日、東京電力(以下「東電」と記す)から衝撃的な発表があった。

福島第一原発1号機で、事故直後に「炉心溶融」が起きていて、燃料の大部分が溶融し、圧力容器の底にたまった状態になっていたというのだ。(福島第一原発1号機で「メルトダウン」、東電が認める - IBTimes

これまで、燃料は「一部損傷」と公表されてきたものが、一転、ほぼ全ての燃料が溶融し、圧力容器には数センチ程度の穴があいて、放射性物質を含む冷却水の一部が漏れ出ていたという。

12日後の24日、今度は、2号機と3号機に、1号機と同様の「炉心溶融」が起きており、圧力容器にあいた穴から冷却水が漏れているという発表がなされた。(福島第1原発:1号機と2号機の格納容器に穴の可能性 - 毎日jp

圧力容器内に設置された水位計が正しく機能しておらず、実際には容器内にほとんど水が残っていなかったことから判明したようだ。

これらの発表に対して、ネットユーザーは口々に「知ってた」と、驚きを隠せない様子である。(痛いニュース(ノ∀`) : 福島第一原発1号機「メルトダウン」…東電認める

ここで注意すべきことは、これらの発表は、現状で入手しうる情報から東電が導き出した「推測」であり、目で見て確認した「事実」ではないということだ。つまり、今後新しい情報が入り次第、覆る可能性があるということ。これまでもそんなことばかりだったので、今さら言う話でもないかもしれないが。


東電発表による現状の推測

東電の発表によると、1〜3号機の燃料棒は、ほとんど全て溶融し、圧力容器の底に溜まっているという。さらに、容器には複数の穴があいていて、その大きさは全て足しても数センチくらい。そこから水が漏れ、容器の中にはほとんど水が無いらしい。

しかし、燃料棒が溶けて圧力容器の底に溜まっているのが功を奏し、少量の水がそれを安定して冷却しているのだという。最悪の事態は避けられた、という見方をしているようだ。

直径数センチメートルの穴の違和感

しかし、この報道を聞いて、私は強い違和感を覚えた。それは、圧力容器にあいたとされる複数の小さな穴のことである。

東電によると、直径数センチメートルの小さな穴が複数あいている可能性があって、それらを全て集めると直径7センチメートルとか10センチメートルくらいになるらしい。これは、圧力容器内の気圧から推測して導き出したのだとか。

しかし、ちょっとおかしくはないだろうか?

圧力容器は厚さ16センチメートルの分厚い鋼鉄製である。そこに数センチメートルの穴があくとはどういう状況か?

最もよく言われている「溶融した燃料が穴をあけた」のだとすると、ドリルであけたような細い穴が複数あいていることになる。不自然極まりないし、核燃料が全方向に放熱していることを考えれば、そう都合よく一方向に向かって穴をあけることはありえない。周辺も同時に溶け、穴はもっと大きくなっているはずだ。

もう一つは、テレビニュースの解説図で見たのだが、圧力容器に亀裂が入るケース。これならば、ある程度内部圧力を保ちながら水が漏れるという状況も説明がつく。隙間を全部合わせると直径数センチ程度の穴に相当する亀裂が発生しているとか、想像できなくもない。

しかし、鋼鉄の亀裂は、材料に酸化物など不純な物質が混入している場合に起こる現象である。この世で最も強度が求められる原子炉に、そのような劣悪な材料が使われるはずもない。地震の震動にはもちろん、炉心溶融時の高温高圧でも亀裂を起こすようなことにはならないだろう。その前に溶けるんじゃないだろうか。

最もあり得るのは、圧力容器底部に落下した溶融燃料の塊が、その熱で直接鋼鉄を融かした可能性だ。ただし、先に挙げたように、ドリルのような細長い穴があくのではなく、圧力容器の底を広い範囲で融解しているパターン。

しかしながら、そうした場合、もっと大きな穴があいていなくてはおかしい。炉心が全て溶融したのだから、核燃料はライトバンとかマイクロバスくらいの大きさの塊になっているはず。それが、もし圧力容器の底部に穴をあけたのなら、直径数メートルになっているはずである。

ひょっとして、何らかの理由で、ほんの数センチ穴があいた状態で鋼鉄の融解が止まるような奇跡が起こったのかもしれない。しかし、2号機と3号機も似たような状態であることを考えれば、そのような偶然も想像しにくいだろう。

では、この「全部合わせると直径数センチメートルになる小さな穴」の正体とは一体なんなのだろうか?

繰り返すようだが、この穴は、圧力容器内の気圧から割り出した「推測」でしかない。つまり、穴の大きさも数も「事実」とは言い切れないわけだ。もしかしたら、穴すらあいていないのかも知れない。

ならば、次のような仮説を立てることも可能だ。

クラストで覆われた核燃料

その前に、溶融した核燃料がどのような状態になっているかを考えてみたい。

これも、現物を視覚的に確認できるわけではないが、日本原子力技術協会最高顧問の石川迪夫氏は、溶融した核燃料を直径数メートルの卵形で、厚さ20〜30センチの硬いクラスト(カサブタのような外皮)で覆われている、と予想している。

核燃料の表面のみが冷却されて固まり、中身はドロドロに融けた状態というわけだ。

中身の温度について、石川氏は、純粋な二酸化ウランではなく、ウラン、ジルコニウム、酸素の三元合金のであることから2300℃程度と言っている。しかし、東電のモニタリングによると3000℃近くまで上昇していることから、そのくらいの温度を維持している可能性が高いだろう。二酸化ウランの融点は2800℃なので、かなり粘度の低い、ゆるゆるの液体になっていたと考えて良いと思う。

石川氏は2300℃で卵形を想定していたので、それよりもかなり潰れて、卵パンとか甘食くらいの形状になっていたかもしれない。

少量の水で冷却は可能か?

もう一つ、仮説を立てる上での前提条件を示したい。

東電は、溶融した燃料は圧力容器の底にほとんど落ちたが、少量の水が残っているため安定して冷却されていると話している。

しかし、そんなことが可能であるのか、冷静に考えてみたい。

確かに、燃料を冷却するには水が最も効率的で、水に浸してある以上、その部分は冷却されてクラスト状に固まっているはずである。しかし、それは水に触れていることが大前提ではないか。

なぜ、このことが指摘されないのか不思議なのだが、溶融した核燃料は圧力容器の底に溜まっていて、容器と核燃料の間には水が入り込む隙間は無いはずなのだ。しかも、核燃料の熱で圧力容器に穴があいたとするなら、容器の底と核燃料の一部は、融合して一体化していることも考えられる。

健全な状態の圧力容器の中では、核燃料は燃料集合体に分けられ、燃料棒に分けれられ、さらにペレットという小さいブロックに分けられている。そして、そのペレットの隙間にまでくまなく冷却水が入り込んで、効率よく冷却(熱交換)が行われている。

しかし、燃料が溶融して一箇所に集まった場合、そうはいかない。全体の表面積が小さくなり、ただでさえ冷却しにくい状態な上、その片面は圧力容器と同化してしまっているからである。つまり、冷却水が触れている上半分の表面だけがクラスト状に冷え固まり、残りの部分は高温の液体のままなのだ。

そのような状況で、安定した冷却などできているはずがない。「少量の水」と書いたが、大量の水でも不可能だろう。

では、どうして(計測データ上)現状は安定して見えるのか。やっと本題。

仮説:圧力容器の底には大穴があいていた

溶融して液状化した核燃料は、一旦圧力容器の底に溜まる。容器の底に、わずかにでも冷却水が残っていたなら(水蒸気爆発が起きていないので、全く残っていなかったかも)、それに触れている上面だけがクラスト状に冷え固まり、下面は容器底面の鋼鉄を融かし始める。

圧力容器は、厚さ16センチメートルと極厚だが、鋼鉄の融点が1600℃程度しかないため、いとも簡単に穴があいて液状の核燃料が容器の外部に漏れ出す。最初は小さな穴だが、徐々に穴を広げて、最終的には液状化した核燃料が、ほとんど全て漏れ出したかもしれない。

冷却水に冷やされてクラスト状に固まった核燃料の上面は、ドームのような形状を築いていたと思われるが、核燃料が漏れ出すにつれて、どんどん水圧に押しつぶされていっただろう。

そして、液体状の核燃料がほとんど外部に流れ出た後で、最終的に、そのクラストのドームが、カサブタとなって容器の穴を塞いだと考えられる。

もっとも、そのカサブタは、穴を塞いでいるといっても完全に密閉しているわけではない。冷却水をせき止めることはできないが、空気の流れはある程度妨げていると予想される。そうすると、圧力容器内の気圧は若干高めになり、直径数センチメートルの穴しかあいていないという東電の推測と、データ上は矛盾しないことになる。

また、核燃料は圧力容器内にほとんど残っておらず、クラスト状に固まったわずかな残りカスがブスブスと熱を出している状態なので、容器内の温度が比較的低温ながらも発熱を続けているとする東電の発表と合致する。

東電は、この状態を「安定している」と言っているが、私の推測が間違っていなければ、燃料自体がすでに存在しないために、一見安定しているように見えているだけである。

溶融した核燃料は今どこに?

では、溶融し、圧力容器の底から流れ出た大部分の核燃料は、今どこにあるのか。

まず、格納容器の底に落下したことは間違いない(※私の推測が間違っていない場合)。格納容器には冷却水が無く、また厚さ3cm程度の鋼鉄製であることから、それはあっさりと突き破り、さらに下のコンクリート基礎まで到達したと思われる。

コンクリートの融点は鋼鉄よりも高いが、3000℃には耐えられないため、コンクリート基礎以下の部分も、ある程度融解している可能性がある。

このように考えると、圧力容器にも格納容器にも水が溜まらず周囲に汚染水をまき散らしている現状に説明がつく。

まとめ

私のような素人が、こうやって予想を立てたり推察したりすることには、たいして意味のあることではないのだろう。しかし、東電の発表を見ていると、どうも危機意識が足りていない気がしてしかたがない。そう思ったら、いても立ってもいられず、自分の考えを書き起こしてしまった。

東電は、これまでも、明確なデータが得られるまで事態の深刻さを認めないという傾向にあり、今回の「炉心溶融はしたけど安定している」という発表にも同じニオイを感じている。

データからの推測に過ぎない話をあたかも事実のように語り、最も楽観的な想定ケースをたった一つだけ示すようなことをしてきた東電。しかも、それが間違えているのだから始末が悪い。本来ならば、最悪ケースを含めて、他にもいくつかの想定ケースとその対策を用意しておくべきなのである。

そうしていたなら、穴ぼこだらけの格納容器に注水し、汚水を垂れ流すだけ垂れ流すという愚挙も避けられたのではないか? 当初から「水棺」に反対する専門家もたくさんいたはずだ。

「穴はあいているが小さなものだ」という見解も、現実的に考えれば矛盾した話であり、私が示したような最悪ケースも考えるべきだろう。私以外にも、溶融した燃料の大部分が格納容器に落下していると指摘する専門家(私は専門家じゃないけど)も少なからずいるわけだし、彼らの声にも耳を傾けなくてはならないと思う。

もちろん、そうならないことを願うのみだが、今のまま事態が進行すれば、また最悪ケースが拡大しそうな、嫌な予感が止まらない……。


Twtools(つぃつーるず)

2011年5月20日金曜日

【Twtools】「なかよしチェッカー」をリリースしました

Twitterユーザー向け便利ツールサービスTwtools(つぃつーるず)に、「なかよしチェッカー」を追加しました。

なかよしチェッカー」は、Twitterユーザー同士のフォロー関係を調べるためのツールです。現状では、以下の3項目について調べることができます。

  • 相互にフォロー

    相互フォロー関係(あなたのフォローしている相手が、あなたのこともフォローしている関係)にある相手ユーザーを一覧表示します。

  • あなたが一方的にフォロー

    あなたはフォローしているけど、相手はフォローしてくれていない場合、その相手を一覧表示します。信じていた相手にリムーブされている事実が発覚し、胸をエグられる危険性もあるので、ご注意を。

  • 相手が一方的にフォロー

    あなたはフォローしていないけど、あなたをフォローしてくれている相手を一覧表示します。普段よく会話している人に限って、まだフォローしていないことに気づかされたりします。これを機会にフォローを返して、もっと仲良くなりましょう。


今後は、ユーザー名を入力して確認する機能や、「返信」「RT」「お気に入り」など、相手ユーザーとの交流頻度を集計する機能などを実装していく予定です。これは、「リムられ」「リムーブ」にも組み込みますので、フォローユーザーを整理するときなどにご参考ください。

あと、ボタンのデザインですが、最初は♂♀のツイ鳥がイチャついてる図案でしたが、イラっときたのでこんな感じになりました(笑)。“Mutual Checker”って、英語的におかしいですかね?

2011年5月12日木曜日

「魔法少女まどか☆マギカ」と原発をこじつけてみた(まとめ)


(まだ見ていない方は、ネタバレ注意)

東日本大震災において、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

前回のエントリーは、衝撃的な事実が判明したところで終わった。

なんと、脚本の虚淵玄氏は、元々原発を意識して「魔法少女まどか☆マギカ(以下、「まどマギ」と記す)」を書いた節がある。しかも、原発を肯定する考えにあるようだ。

「夢のエネルギー」と言われているものも、結局は色々な対価やリスクがあるんだろうと思います。かつて原子力がそう思われていたようにね。でもだからと言って、危険なその力をただ否定し封印してしまうのは、自分は間違いだと思う。折り合いを付ける方法がいつかどこかにあるはずだと、探し続ける努力を怠っちゃいけない。道を探ることを止めちゃったら、それまでにあった悲劇や犠牲すら無駄になってしまう……と思うんです。http://nano.g.hatena.ne.jp/ext3/20110328/p1

しかし、彼の談話には、原発に賛否とかいう以前に、重要な意味が含まれているように思う。

それは、「まどマギ」の中でも一貫して語られてきた、「希望」には「絶望」という犠牲が、「祈り」には「呪い」という代償があるということである。

まどかが奇跡を起こし、宇宙を魔女がいない世界に再構築した後、“魔獣”と呼ばれる新たな異形の怪物が現れる。その世界にも魔法少女が存在し、彼女たちは魔獣と戦う。魔獣も「呪い」のエネルギーを持っていて、倒すとグリーフシードを吐き出す。QBは、魔女から得た時と同様に、それを回収する。

魔獣は、魔法少女にとっては新たな敵だが、QBにとっては新たなエネルギー源である。(ただし、ほむら以外の魔法少女とQBは、魔女と戦いエネルギーを回収していた世界の記憶は無い。)しかし、QBはほむらから魔女の話を聞き、それに比べて魔獣からエネルギーを回収するシステムは効率が悪いと感じたようだ。

君の話にあった魔女の概念は、なかなか興味深くもある。人間の感情エネルギーを収集する方法としては、確かに魅力的だ。そんなうまい方法があるなら、僕達インキュベーターの戦略も、もっと違ったものになっただろうね。

一方、魔法少女はより多くの魔獣を倒さなくてはならなくなり、任務の煩わしさが増大していたように思う。魔女が(使い魔を伴いつつも)1体で出現するのに対し、魔獣は何体も群れをなし、しかも次から次へと現れる。また、魔女は人々に悪さをして命を奪おうとするのに対して、魔獣は人々から感情を吸い上げ廃人にするという(ソースは制作サイドからの流出資料→http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-1632.html)。

さらに、魔法少女は魔女にこそならなくなったが、魔力を使い果たすとソウルジェムごと消滅してしまう。さやかが、魔獣と戦った直後にマミが言うところの「円環の理(どういう意味?)」に導かれて消えてしまったのも、そういうことなのだと考えられる。

エネルギーの回収効率が悪く、リスクは決して小さくない。

はたして、まどかが自らを犠牲にして作り直した新しい世界は、言うほど素晴らしいものなのだろうか? 私には、前の世界と大差ないように思えた。ひょっとして、まどかが起こした奇跡の代償を世界全体で埋め合わせていて、プラスマイナスゼロになっただけではないだろうか。

そして、この「魔獣」による新しいエネルギーシステムが、私にはソウルジェムに代わる代替エネルギーに思えた。ソウルジェムを原子力と考えれば、太陽光や風力などの再生可能エネルギーがこれに該当するだろう。

しかし、どのエネルギーを選んだとしても完璧なものなど無く、メリットがあると同時にリスクやデメリットが介在している。再生可能エネルギーは、廃棄物の観点では非常にクリーンで、半永久的に資源枯渇の心配が無いことがメリットだ。だが、太陽光は天候に左右されて安定しないし、風力は低周波騒音や景観破壊などの公害リスクが伴う。しかも、現状では建設コストが高すぎる。

さらに、これらのエネルギーは個々の出力が小さく、いちいちスマートグリッドなどのシステムを通して調整しなくては使い物にならない。私が、煩わしい「魔獣」のシステムを、代替エネルギーとりわけ再生可能エネルギーのイメージと重ねたのは、この煩雑な効率の悪さだ。

その点、原子力は効率が良い。平常運用においてはCO2を排出せずにクリーンで、気象条件などに左右されずに、昼夜を問わず安定した電力を高出力で発電できる。発電そのものにかかるコストで考えれば、原油の需給バランスが崩れ始めている火力発電より安上がりでもある。まさに夢のエネルギーと言える。

ただし、このエネルギーにも大きな欠点が3つある。

一つ目は、事故リスク。東京電力福島第一原子力発電所の事故でも明確になったように、原発に絶対安全はありえない。地震と大津波以外にも事故リスクはいくらでもあるが、十分な対応はできていないのが現状である。もちろん、虚淵氏の言うところの悲劇と犠牲を無駄にせず、より安全性の高いものを作っていくことは可能だと思う。しかし、そうすると、コスト優位性が失われていくため、ある程度のリスクは残したまま運用するのが現実的だろう。つまり、一定確率で事故が起こることを想定、というか覚悟しなくてはならない。そして、事故が起った時の経済損失は、発電にかかるコストの優位性をいとも簡単に吹き飛ばす。

二つ目は、燃料であるウランの枯渇。ウランは希少資源であり、現在の可採年数は、約70年しかない。もし、世界的に原子力利用が進み、新興国や途上国も使うようになれば、この年数はさらに短くなっていく。つまり、ウランによる原子力発電は、今世紀半ばで終わるエネルギーシステムなのである。

三つ目は、使用済核燃料の問題。使い道の無い余剰プルトニウムを始めとして、冷却までに時間のかかる放射性廃棄物が大量に発生する。その処分にかかる期間は数万年と言われている。プルトニウムについては、すでに日本は約46トンを保有しており(政府発表は、核分裂性プルトニウムのみで約30トン)、半減期が2万4000年なので9万6000年後でもその8分の1の5.75トン(3.75トン)程度が残ることになる。しかも、この量は年々増え続けている。

日本政府は、この廃棄物を地中深くに埋めて保管する予定でいるようだが、この管理に安く見積もって年間10億円かかるとして、仮に10万年保管したら100兆円が必要になる。さらに、安全性を担保するためには、地殻変動の綿密な分析を行わなくてはならず、そのための調査研究コストもかかる。高レベル放射性廃棄物については、「オメガ計画」により核種変換を行い、処分期間を数百年に短縮する試みがなされているが、その研究費や核種変換にかかるエネルギーと労力を考えれば、さらに莫大なコストがかかることになる。

また、出力調整できないため、夜間電力に余剰ができてしまい、それを解消するために非効率な揚力発電を行っている。これにより、他の発電方法に対するコスト優位性を下げているとの意見もある。電力各社は、揚力発電にかかるコストを原発コストに組み入れていない。

私自身、脱原発を望んでいるので、原子力に不利な情報を多く出してしまった。

しかし、言いたいことはわかっていただけたと思う。

魔法少女を魔女に変えるエネルギーシステムと魔獣によるシステムが一長一短であるように、原子力も再生可能エネルギーも一長一短なのである。

安定していて“運転コストは”安い原子力は、事故リスクが大きく“後処理コストが”高い。ウランの可採年数も限界がある。

再生可能エネルギーは、資源枯渇の心配がなく、(概ね)クリーンで安全だが、出力が安定せず、使い勝手が悪い。電力不足に陥り、停電を起こす可能性も否めない。今後温暖化が進めば、局所的に日照量が減ったり風力が安定しなかったりすることは大いにありうるし。

これこそ、まさにQBが言うところの

どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかのゆがみを生み出すことになる。やがてそこから災厄が生じるのは当然の摂理だ。

であり、さやかが言うところの

誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね。あたしって、ほんとバカ…。

なのである。これは、魔法少女(=原子力)だろうが魔獣(=再生可能エネルギー)だろうが関係なく。

それなのに、今行われている原発論争はどうだろう? 原発を推進する側も反対する側も、「希望」が一方的に実現すると言わんばかりに、メリットばかりを主張して夢みたいなことばかりを語っている。

放射線で死んだ人はいないから、原発は安全? コストが安い? 原発事故の被害者は、精神的肉体的経済的に大きく傷つけられている。これからのことを考えたら、生きた心地がしない人もいるだろう。コストの優位性を主張するにしても、後処理や揚水発電などの不都合な費用について目をつぶっているのはいただけない。

一方、「原発を無くしても電力は不足しない」と主張する人たちも、同様である。震災で火力発電所もダメージを負っている現状を考えれば、原発を止めることにより電力不足が生じる可能性は高い。その影響を考え厳しい節電を強いられる覚悟はもとより、大規模な停電が起こり社会的なトラブルが生じることも想定しなくてはならない。

奇跡も、魔法も無いのだ。

しかし、虚淵氏が言うように、「折り合いを付ける方法がいつかどこかにあるはずだ」と信じ、それを実現させるための努力を忘れては何も報われないだろう。原子力を本当に安全で放射性廃棄物を出さない(もしくは処理が可能な)ものにできるかもしれないし、再生可能エネルギーを使って安定的で強力な電力プラットフォームが作れるかもしれない。虚淵氏は前者を指して言っていたようだが、私は両方とも可能性があると思う。

もちろん、二者択一ではなく第3の道もあるだろうし、両者を折衷する選択肢もありうる。

一番良くないのは、「しかたがない」と現状で立ち止まってしまうことだ。

それでは、何も始まらない。

原発問題、ひいてはこれからのエネルギー問題を考えるなら、そのメリットを主張するだけではなく、デメリットやリスクを包み隠さず素直に認め、その上で国民が納得できるようなビジョンを描かなくてはならない。

これは、政府が政治力を発揮して行うべき仕事である。

え、今の政府に政治力なんて、それこそ奇跡や魔法を求めるようなものだって?

確かにね……。

(注:あくまでもこじつけです。)

おまけ

とはいえ、前にも述べた通り、私は原発から脱するべきだと考えている。

なぜなら、原子力と再生可能エネルギーにはそれぞれメリットとデメリットがあるが、両者は性質が全く違うからだ。

端的に言ってしまうと、原子力はデメリットとリスクを未来に押しつけてしまっているからである。それは、もちろん放射性廃棄物の問題。事故を起こした場合は、汚染した環境を未来に押しつけるかもしれない。

想像してみてもらいたい。例えば1万年後、私たちの子孫は、1万年前の先祖が残した放射性のゴミに生涯つき合わされることになる。かつて原子力と呼ばれた効率の悪いエネルギーシステムの残骸である。1万年も経てば、地殻変動による設備の破壊もありうるし、経年劣化も起こりうる。何度も危険な状態にさらされながら、綱渡りのようにこれを保全していくことだろう。

そのために、巨額の税金が投入されていることも想像に難くない。

すでに(ウラン核分裂による)原子力から受ける恩恵など一切無いのに、わけのわからん負の遺産としてリスクのみを背負うことになる。

ひょっとしたら、技術の進歩とともに、より効率的な処分方法が発明されていて、すでに廃棄物は消滅しているかもしれない。しかし、今のところその確証があるわけではない。

もちろん、それよりも早く破滅が訪れることもありうる。いや、その可能性の方が高い。商用原発が始まってからわずか50年余りで、3回も大きな事故が起こったのだから、1万年の間に起こる回数は計り知れない。未曾有の天災やヒューマンエラーが何百回となく繰り返されるだろう。

その結果として、人類を滅ぼすとまではいかないまでも、繁栄と進化には多大な悪影響を及ぼすはずだ。

では、脱原発して再生可能エネルギーに切り替えるのはどうだろう?

確かに、電力供給は不安定になり、停電も頻発、経済に悪影響を及ぼす可能性がある。それだけではなく、夏場の冷房や冬場の暖房を制限するなど快適な生活を我慢しなくてはならない。電力を使った娯楽も、気軽に楽しむことができなくなるかもしれない。医療機関にとっては、患者の生命に関わるようなこともありうる。

しかし、デメリットとリスクは、将来に持ち越さず自分たちで受け止めることができるのだ。

そもそも、停電はそんなに問題か。いや、問題なんだけど、絶対に起こってはならないものなのか。

だとしたら、その考え自体が、大きな問題である。

例えば、首都直下型の大地震が起きたらどうなるだろう? 何の前触れもなく電力が途絶え、数週間復旧しないかもしれない。

あるいは、太陽嵐。1989年の太陽嵐によりカナダのケベック州で起きた大停電は、600万人に影響を及ぼし復興に数ヶ月を擁した。太陽嵐による停電は広域で起こる可能性があるので、下手をすれば、日本全体に停電が起こって大パニックになる。

何が言いたいかというと、重要なのは停電を起こさないことではなく、停電に備えることだ、ということ。

そして、少しずつでも安定した電力、停電の少ない都市を目指していけばいい。

原発を継続していく資金と労力をこちらに振り向けていけば、劇的に進歩するのではないかと思う。

賠償金で精一杯な気もするが…。


さて、ここで終わらせてしまうと、結局「脱原発」の話になってしまい、不公平感を残してしまう。

そこで、今後も原発を推進していくためのとっておきのロジック(ロジックってほどじゃないけど)を最後に書いて、〆させていただきたい。

それは、これまでの原発事業を全て否定しつつ、居直ってこれを推進するやり方である。

今現在、日本だけですでに46トンものプルトニウムとそれ以外の高レベル放射性廃棄物を大量に抱えており、この処理にはどのみち数万〜数十万年の時間がかかる。このくらい先の未来だと、人類が生き残っているかどうかも怪しい。そう考えると、この数十万年という時間は、すなわち「永遠」と考えても大げさではない。永遠であるならば、100万年だろうが1000万年だろうが関係ない。

原発は間違っていたけど、来た道は戻れないからどんどん進めていってしまえばいいじゃないか、という考えだ。

そもそも、人類は極めて奇跡的に生まれ、地球の長い歴史の中で、ほんの一瞬だけ偶然に生かされているような種族である。太陽からの距離が適当で水と大気がある地球は、生命が存在する条件を満たした星ではあるが、人類が誕生し、繁殖できる気温や大気構成が持続するのは、そう長い期間の話ではない。過去の地球には酸素がほとんど無い時代や平均気温がマイナス20℃以下の時代もあった。これからもそうした過酷な時代が当然やってくる。絶滅は、結構簡単に起こりうるのだ。

例えば、アメリカにある世界最大の活火山イエローストーン。この火山は60〜100万年に一度のペースで大爆発を起こし、地球環境に劇的な変化を及ぼす。

まず、半径1000km以内に住む人の90%は、酸欠で窒息死すると言われている。噴煙は成層圏を余裕で突き抜けるほど高く吹き上がり、有害物質を大量に含んだ火山灰は、ジェット気流に乗ってヨーロッパや中国、ロシアを壊滅させる。多分、日本にも影響が及ぶ。生き残ったごく少数の人類も、日照量が激減して寒冷化した環境で、石器時代のような生活を強いられる。南半球は多少生き残るだろうが、北半球はほぼ全滅すると予想される。そうなったら、もはや原発とか放射性廃棄物の危険レベルでははない。

ちなみに、イエローストーンが最後に爆発したのは64万年前で、最近地盤が激しく隆起するなどホットな話題を振りまいている。

もっとも、地球の時間尺度で「今にも爆発する」というのは、数千年とか数万年の話なので、実際に噴火するのは1年後かもしれないし1万年後かもしれない。

しかし、そんなことがあるなら、数万年後なんて未来のことを心配しても意味は無い。その頃には人類が滅んでいるという前提で、どんどん放射性廃棄物を投棄し続ければいい。

そうやって、皆で捨て鉢になってヒャッハーって生きていくのも悪くないかも。

「自分が死んだ後のことなんてどうでもいい」作戦だ。

そういえば、まどマギでもこんなシーンがあった。

ねえ、私たち、このまま二人で、怪物になって、こんな世界、何もかも滅茶苦茶にしちゃおうか。やなことも、悲しいことも、全部無かったことにしちゃうくらい……壊して、壊して、壊しまくってさ……。それはそれで、いいと思わない?

ただし、多くの人間にとって、生きる目的とは、遺伝子を含めて何かを未来に残していくことである。たとえ1万年先の未来でも、滅ぶのを前提にした社会システムは、人々の活力を奪っていくのではないかと思う。

その前に、よく考えたら、今世紀中にウラン自体が枯渇するんだった。

ダメじゃん。


おあとが悪いようで……。



Twtools(つぃつーるず)

2011年5月11日水曜日

「魔法少女まどか☆マギカ」と原発をこじつけてみた(物語編)


(まだ見ていない方は、ネタバレ注意)

東日本大震災において、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

前回のエントリーでは、「魔法少女まどか☆マギカ(以下「まどマギ」と記す)」の世界におけるエネルギーシステムと核燃料サイクルの共通点について、設定の面から以下のようにこじつけてみた。

  • 魔法少女=原発の街
  • ソウルジェム=原子力発電所、または原子炉
  • 「祈り」のエネルギー(魔法力)=日々生活に使用する電力
  • 魔女=原発に絡む不都合なリスク(使用済核燃料、原発事故)
  • グリーフシード=安全神話、プルトニウム
  • 「呪い」のエネルギー(エントロピー対策)=高速増殖炉により生み出される未来エネルギー
  • 素質を持った少女=海辺に近く、人口密集地から離れた好立地の自治体

今回は、前回導き出した設定を踏まえた上で、キャラクターの言動を追いながら、ストーリーにおいてどのような共通点があったのか、こじつけていきたい。

(注:あくまでもこじつけです。)

1〜3話

物語の序盤において、主人公鹿目まどかとそのの友人美樹さやかは、キュゥべえ(以下「QB」と記す)と出会い、「魔法少女にならないか?」と契約話を持ちかけられる。子どもの頃にアニメで見たような、夢のようなおとぎ話。しかも、なんでも願い事を一つ叶えてくれるという。

真面目な二人は、先輩魔法少女である巴マミの勇敢さに憧れ、願い事などよりも魔法少女になって魔女から人々を救いたい、誰かの役に立ちたいという想いに駆られる。マミは、魔法少女になることの危険さを二人に説明しつつも、仲間が増えることを歓迎し、そうなるように誘導していた。そして、二人は危険と知りつつも、QBとの契約を前向きに考えていた。

しかし、謎の魔法少女である転校生の暁美ほむらは、二人が契約することに断固として反対し、説得を試みる。

それは、彼女が、転校当日、まどかに対して語った次の警告に集約されている。

あなたは自分の人生が、尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?だったら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね。さもなければ、全てを失うことになる。

後から明らかになることだが、ほむらは「時間遡行者」。未来からやって来た、全ての悲劇を知る人物である。どんな結末が待っているかわかっているから、手段を選ばずまどかたちが魔法少女になることを阻止しようとする。

これを原発問題とこじつけるなら、未来の世界で大事故を経験し、極端な原発反対論者になった人物が、タイムスリップしてやってきたようなものである。どんな理由があろうとも、新規に原発を建てることなど許さないという立場だ。

そして、3話目にして最初の“事故”が起きた。マミが、魔女との戦いの中で命を落としてしまったのだ。

4〜9話

マミの死を目の当たりにして、二人の「魔法少女になりたい」と思う気持ちは途端に萎えてしまう。マミから説明を受け、魔法少女のリスクは理解しているつもりだったが、いざそれが現実のものになると、恐怖に打ち克つことは難しかった。

しかし、さやかは、好意を寄せている男子の怪我を直したいという強い「希望」があったため、まどかに黙って一人だけQBと契約を結んでしまう。

これは、交付金や雇用などの経済的な恩恵を望み、ある程度のリスクを覚悟して原発を誘致する自治体の発想に近い。

このことについて、ほむらは次のような辛辣な言葉を残している。

一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんて無い。あの契約は、たった一つの希望と引き換えに全てを諦めるってことだから。

この時点では、まどかもさやかもその言葉の意味をよく理解していなかったはずである。マミの死は、たまたま運が悪かったせいで慎重に行動していれば回避できた、くらいに考えていたのではないだろうか。

しかし、第6話で二人は根本的な認識違いを思い知らされる。

QBの“巧妙な手違い”により、マミの後任として呼ばれた魔法少女の佐倉杏子。彼女とさやかが、価値観の対立から決闘を始めようとしたその瞬間、まどかはそれを制しようとして、さやかのソウルジェムを陸橋から投げ捨ててしまう。それは、トラックの荷台に載せられて遠くへ運ばれ、しばらくするとさやかは絶命してしまう。

QBは、魔法少女の本体はソウルジェムであり、肉体は外付けのハードウェアでしかなく、100メートル以上離れるとコントロールが効かなくなって停止してしまう、と言う。そして、普段は肌身離さず持ち歩いているものだから、こういう事故は滅多に起きない、と弁明した。

事故の原因を「想定外」で片づけようとする、東京電力のような弁明だ。

その後、さやかに問いつめられ、QBは次のような言い訳をした。

僕は「魔法少女になってくれ」ってきちんとお願いしたはずだよ。実際の姿がどういうものか、説明を省略したけれど。

やがて、さやかは破滅の道へと向かい、最後はソウルジェムに穢れが溜まって魔女に変容してしまう。演出面から考えると、さやかの心に膨らんでいった恨みや憎しみがソウルジェムを濁らせ、破滅的な結末を呼び寄せた、と考えるのが正しい。しかし、冷めた見方をするなら、ソウルジェムから穢れを抜き取るというメンテナンスを怠ったために起きたヒューマンエラーと考えるのが妥当だ。

さやかが魔女に変容した後、まどかは部屋で一人うなだれ悲しみに暮れていた。そこへQBが現れ、自ら真の目的を語り出す。

勘違いしないで欲しいんだが、僕らは何も人類に悪意を持っているわけじゃない。全ては、この宇宙の寿命を延ばすためなんだ。まどか、君は「エントロピー」っていう言葉を知ってるかい? 簡単に例えると、焚き火で得られる熱エネルギーは、木を育てる労力と釣り合わないってことさ。エネルギーは、形を変換するごとにロスが生じる。宇宙全体のエネルギーは、目減りしていく一方なんだ。だから、僕たちは、熱力学の法則に縛られないようなエネルギーを探し求めてきた。そうして見つけたのが、魔法少女の魔力だよ。
とりわけ、最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の希望と絶望の相転移だ。

QBは、宇宙のエネルギー問題を解決するために、少女を魔法少女に変身させ、その魔力を回収していた。しかも、本当に重要なエネルギーは、奇跡を起こす「希望」ではなく、呪いを生み出す「絶望」の方だと言う。

これは、原子炉で発電される電力そのものよりも、その使用済燃料から抽出されるプルトニウムの方が重要という核燃料サイクルの仕組みに似ている。プルトニウムはウランと混合されMOX燃料になり、高速増殖炉という夢の発電システムに使用される。

高速増殖炉は、通常の原子炉(ウラン燃料を使った従来の核分裂路)よりも遥かに効率のよい発電方法だが、その運用はとても難しく、危険を伴うものである。そのため、未だに実用の目処が立っていない(実現可能のような口ぶりだが、当面不可能との見方が強い)。

ただし、危険度で言えば魔法少女のエネルギーシステムの方が一枚上だろう。魔女が暴れ出すことにより一般人の生命を危険に晒すのは原発事故が起きる場合と同じだが、こちらのシステムでは100%確実に事故が起こる(=魔女になる)からである。

QBも、その辺は包み隠さず、露骨な表現でまどかに伝えている。

この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて。待ってるからね。

巷ではQBを敏腕営業マンのように賞賛する声もあるけど、こんなこと言ってたら絶対に契約取れないと思う…。

ここで、QBについて考察してみたい。

QBとは、本当の名前を“インキュベーター(孵卵器)”と言い、宇宙からやってきた知的生命体である。有史以来人類に関わってきたというから、もう何万年も生き続けていると予想できる。ほむらが度々殺害を試みるが、蜂の巣になったり爆発したりしてもすぐに復活する。

人類が、それぞれ別個の感情を持ちながら共存していることに驚いたと言っていることから、別の個体同士で感情を共有していると考えられる。そう考えると、決して不死身の生物というわけではなく、一つの個体が死滅するとすぐに別の個体が出てきて感情も記憶も引き継いで任務を継続しているようにも思える。

QBの任務とは、前述を繰り返すようだが、素質のある少女と契約し、魔法少女を生み出すことである。魔法少女はやがて魔女になり、QBは、その際発生する莫大な「呪い」エネルギーを回収する。そのエネルギーは、エントロピーの法則により減衰した宇宙エネルギーの回復に使われる。

こうしてQBの任務について考えると、原発における“ムラ”の存在を連想すると思う。政官産学が一体となって、原発産業を推進する一連のネットワークである。

具体的には、次のようなつながりを意味する。

  • 政=電力業界から献金を受けたり、原発誘致で恩恵が与えられる政治家
  • 官=電力業界に天下りを約束されている経済産業省などの官僚(逆に電力業界から政府機関に再就職するケースもある)
  • 産=電力業界を中心とした地域の経済団体
  • 学=電力業界から資金援助を受けている大学などの研究機関

マスメディアなども利用しつつ安全な原発をPRし、事故や不祥事を起こしてどれだけほころびを見せても、すぐにほとぼり冷まして復活するタフさ。言葉巧みに少女を誘い魔法少女の契約を結ばせ、殺しても殺しても生き返るQBを彷彿とさせる。

ただし、QBと原発ムラとでは、その動機が根本的に違う。

“原発ムラ”が、世間一般で語られるように利権を目的としたネットワークであるなら、それに対して、QBの目的はもっと純粋で、宇宙を救うという大義のみで活動している。一切の欲望もなければ、ウソも無い。ただ、意図的にちょっと説明を忘れてしまうのだけれど。

しかし、その思想というか、哲学というか、態度について、両者は酷似している。

今現在で69億人。しかも、4秒に10人ずつ増え続けている君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?

親友のさやかが魔女化してしまい、悲しみに暮れて不信感を募らすまどかに対し、QBが言い放ったこの台詞は、最もQBらしい台詞だったと思う。たくさんいるんだから、一人くらい死んだっていいじゃないか、と。

原子力を擁護・推進する人たちの中で、これと似たような論調で語る人は少なくない。例えば、原発のリスクについて、交通事故の死亡者数や炭坑作業者の死亡率を引き合いに出して論じる意見がある。過去に起こったあらゆる原発事故よりも、交通事故や炭坑作業中に亡くなった人の方が多いから、原発の方が安全、というわけだ。最近では「ユッケの方が危険」という話も聞こえてくる。

確かに、今回の原発事故で、放射線被曝で亡くなった方は、今のところ一人もいない。しかし、被害の深刻さを量る場合、単に死亡者数だけで比べるのは妥当なのだろうか?

今回の事故では、原発周辺の住民は避難を余儀なくされた。着の身着のまま、田畑や家畜、そして津波で行方不明になった家族を残し、原発の半径20km圏内から退避しなくてはならなかった。

これは、原発から放出される放射性物質から身を守るためであり、逆に言えば避難をしなければ生命を危険に晒していたということである。放射線の害については、諸説云々あるが、十分な疫学データも無いような現状においては、避難は妥当な対応と言えるだろう。危険とも安全とも断定できない状況においては、危険と判断して行動するしかない。

その結果、幸いにも放射線を原因とした犠牲者は、これまでのところゼロに抑えることができている。しかし、地元住民にとっては、とても「幸い」などと言える状況ではなさそうだ。

この先何ヵ月間自宅に戻れないかもわからず、ひょっとしたら事態の収束には数年間かかる可能性すらある。そうなれば、農業、畜産業それから漁業は、間違いなく壊滅してしまう。事故収束後、奇跡的に復旧したとしても、風評被害の影響は長期に及ぶことが予想される。

家屋も、地震と津波に壊されたまま放置状態だ。震災と津波で亡くなった方々のご遺体も、防護服に身を包んだ警察や自衛隊が懸命の捜索を続けているが、発見されても放射能汚染が激しいため、遺族に引き渡すことが難しいという。また、想像したくはないが、原発事故が原因で救出が遅れ、命を落とした方も少なくはないはずである。

そうした状況の中、避難所の被災者からは、悲痛な声が聞こえてくる。80歳は過ぎていようお年寄りが「(太平洋戦争の)戦地の地獄を経験したが、今の方がひどい」と語っていたのは印象的だった。

少なくとも住民生活は完全に破壊され、街は死んでしまったも同然と言える。

もし、この状況を見て、“死人が出てないからたいしたことない”と言う人がいるなら、被害者の前でもそう言ってみてもらいたい。まあ、QBは面と向かって言っちゃったわけだけど。

ちなみに、そんなQBに対するまどかの反応は、こうだ。

そんな風に思ってるなら、やっぱりあなた、私たちの敵なんだね。

とはいえ、QBは、何から何まで間違ったことを言っているわけではない。むしろ、理屈の通った正論を語っていると言えなくもない。まどかはQBに対して「騙した」と激しく非難するが、QBはため息まじりに反論する。

騙すという行為自体、僕たちには理解できない。認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、なぜか人間は他者を憎悪するんだよね。

女性関係でモメた時などに使ってみたい言葉だ。たぶん、殺されるけど。

また、終盤近くになると、QBは人類を家畜に例えてこんなことも言っている。

彼ら(家畜)は人間の糧になることを前提に、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している。牛も豚も鶏も、他の野生動物に比べれば、種としての繁殖ぶりは圧倒的だ。君たちは皆、理想的な共栄関係にあるじゃないか。

人間を家畜に例える時点で常識的には受け入れられない話ではあるが、一応理屈は通っている。

また、歴代の魔法少女たちが、さやかと同じく「呪い」のエネルギーに呑まれて魔女化し、悲惨な最期を遂げたことについても、こんな風に語った。

彼女たちを裏切ったのは僕達ではなく、むしろ自分自身の祈りだよ。どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかのゆがみを生み出すことになる。やがてそこから災厄が生じるのは当然の摂理だ。そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも、願い事なんてすること自体が間違いなのさ。でも、愚かとは言わないよ。彼女たちの犠牲によって、人の歴史が紡がれてきたこともまた事実だし。

「原発を批判するなら電気を使うな」という理屈に非常に近いが、あながち間違っているとは言えない。私たちが条理にそぐわない電力の恩恵を受けた分、原発事故という災厄を生み出したというのも一理ある話ではある。電力供給という意味では何の恩恵も受けていない福島県を中心に災厄が降り掛かり、東京で電力を浪費している私たちがたいして被害を受けていないという現実。QBよりも、私たちの方がよほど理不尽なようにも思えてくる。

QBは、さらにたたみ掛けるように言う。

そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ。それを正しく認識するなら、どうして今更たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?

QBには、一人一人の人間の尊厳などという概念が存在しない。なぜなら…

僕達の文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった。だから、君たち人類を発見した時は驚いたよ。全ての個体が、別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね。

一方、まどかは、QBの感情に訴えかけようとした。

ずっとあの子たちを見守りながら、あなたは何も感じなかったの? 皆がどんなに辛かったか、わかってあげようとしなかったの?

当然、両者が理解し合えることはない。

これは、原発問題に際して「経済至上主義」の下に原子力推進を訴える人々と、「極端な感情論」の下に反原発を訴える人々が決して相容れないことに似ている。

QB話が長過ぎた。

話を元に戻すと、魔女になったさやかは、結局、魔法少女杏子の手により、心中するように消滅することになる。

(注:あくまでもこじつけです。)

10〜11話

第10話は、暁美ほむらが過去を回想する回である。過去と言っても、彼女は同じ時間を何度も遡行しながらやり直しているので、今までくぐり抜けてきた並行世界の体験の回想。そこにはいくつもの未来の可能性があったけれど、どの結末も魔法少女にとって不幸なものだった。

入院生活の長かったほむらは、復学してもどこか浮いていて友達ができずに寂しい想いをしていた。そんな心の隙間をつけ狙うかのように、魔女が彼女を襲った。すでにQBと契約していたまどかは、魔法少女に変身して間一髪のところほむらを救う。それから、まどかは、ほむらの唯一無二の友達になった。しかし、まどかは最強の魔女“ワルプルギスの夜”との戦いに敗れ、命を落としてしまう。

ほむらは、まどかとの出会いをやり直し彼女を守るために、QBと契約し魔法少女になった。

時間を操る力を身につけたほむらは、過去に戻り、まどかと共に魔女と戦う。しかし、何度過去をやり直しても“ワルプルギスの夜”に敗れ、勝ったとしてもまどかが魔女に変容してしまう未来しか待っていないことを知る。そして、それがQBの目論見であることに気づく。

その事実を他の魔法少女に伝え、最悪の事態を回避しようと奔走するが、どうしても最後にまどかが魔女化する結末を変えることができなかった。

まどか、たった一人の私の友だち。あなたのためなら、私は永遠の迷路に閉込められてもかまわない。

ほむらはそう決意して、まどかと出会う前の過去へと再び時間を遡った。

ここでのポイントは、ほむらが「まどかを救う」というたった一つの願望だけを優先し、他のことなど全く考えていないことである。他の魔法少女のように魔女を倒すことにも、そこからグリーフシードを手に入れることにも執着しないし、宇宙エネルギーを補うというQBの使命にも関心がない。とにかく、まどかが魔法少女になることを阻止し、救い出すことだけを考えている。

これは、電力不足など全く考えず、感情に任せて原発に反対する過激な運動家の発想である。とにかく原発を潰せ、と。

ただし、彼女は魔法少女の仕組みを熟知し、その悲惨な結末を知っている点で、そんじょそこらのニワカ原発反対派とはわけが違う。具体的に何が危険で、どうすべきかを理解している。そして、何より決してあきらめない。

似たような信念の下で、原発問題に立ち向かっている人物が実在する。ネット上では何かと話題の、京都大学原子炉実験所小出裕章助教である。

小出氏は、1960年代の後半に東北大学工学部原子核学科に入学し、原子力工学を学んだ。これからは原子力の時代と考えていたが、学べば学ぶほどそれが間違いだと思うようになり、途中から原発に反対する立場を取るようになった。以後、一貫して原発を廃絶するための研究を続けている。

「みんな、QBに騙されている!」と気づき、魔法少女の仕組みに逆らい続けたほむらと共通する想いがあるように感じられる。「あんなオッサン(失礼)と一緒にするな!」とほむほむファンに殴られそうだが。

もっとも、小出氏は、ほむらが宇宙エネルギーの枯渇を無視したように、電力不足を全く考慮しないわけではない。日本の電力事情を調査した上で、全ての原発を停止しても電力不足には陥らないという試算を出している。本当かどうかは不明だが。

しかし、彼の話聞く限り、たとえ電力不足に陥ろうとも、原発を全廃すべしという意見を変えることはないだろう。科学的知見から、いかなる理由があろうとも、原発が存在してはならないと考えているからだ。

結局ほむらは、またしてもQBの策謀に嵌められ、共闘するはずだった杏子を失い、単身“ワルプルギスの夜”と戦うことになる。勝算などほとんど無いが、まどかを守るというたった一つの願いを叶えるために、最後の決戦に挑んだ。

繰り返せば繰り返すほど、あなたと私が過ごした時間はずれていく。気持ちもずれて、言葉も通じなくなっていく。たぶん、私は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う。あなたを救う。それが私の最初の気持ち。今となっては、たった一つだけ最後に残った道しるべ。わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、あなたを私に守らせて。

(注:あくまでもこじつけです。)

最終話

またしても“ワルプルギスの夜”に敗れ、ほむらは万策尽きて全てを諦めかけていた。助けに駆けつけたまどかは、ついにQBと契約して魔法少女になってしまう。まどかの願いは、「全ての魔女を生まれる前に消し去りたい」という内容。自己犠牲の下に世界を救う、という感動的な展開だが、ストーリー的にはかなりご都合主義とも言え、この辺が視聴者の間で賛否が分かれた理由かもしれない。

個人的には、壮大で悲惨なストーリーの決着として悪くない最終回だったと思う。どうあっても救われない世界を、主人公が不条理な奇跡で解決する。それは、逆に言えば物語を未解決のまま終わらせるようなものでもあり、視聴者への問題提起にもなっていたと思う。(問題提起ってほどではないか。)

このことについて、本作の脚本を担当した虚淵玄氏はインタビューで次のように語っている。

「夢のエネルギー」と言われているものも、結局は色々な対価やリスクがあるんだろうと思います。かつて原子力がそう思われていたようにね。でもだからと言って、危険なその力をただ否定し封印してしまうのは、自分は間違いだと思う。折り合いを付ける方法がいつかどこかにあるはずだと、探し続ける努力を怠っちゃいけない。道を探ることを止めちゃったら、それまでにあった悲劇や犠牲すら無駄になってしまう……と思うんです。http://nano.g.hatena.ne.jp/ext3/20110328/p1

待て待て待て、話が変わってきた。なんと、虚淵氏は元々原発を意識して「まどマギ」を書いた臭い。しかも、このコメントを読む限りでは、原発を肯定する考えのようだ。ただし、このインタビューは3月11日以前に書かれたものである。深刻な原発事故が起きた今となっては、「かつて原子力がそう思われていたように」ではなく、現在進行形で「思われている」ことを指摘しておきたい。

しかし、このインタビューから明らかなのは、最後に奇跡を起こしたまどかを原発に例えて言うならば、悲劇や犠牲の上に完成した安全無害なスーパー原子炉(完成形の高速増殖炉?)、もしくは何万年も保管しなくてはならない使用済核燃料を一瞬で安定化してしまう奇跡の廃棄物処理システムということになる。

希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、あたし「そんなのは違う」って、何度でもそう言い返せます

そうすると、この台詞も“安全な原発が不可能だなんて言われたら、あたし「そんなのは違う」って、何度でもそう言い返せます”ってことに?

(注:あくまでもこじつけです。)


長くなってしまったので、まとめは次のエントリーで。



Twtools(つぃつーるず)

2011年5月10日火曜日

「魔法少女まどか☆マギカ」と原発をこじつけてみた(設定編)

(まだ見ていない方は、ネタバレ注意)

東日本大震災において、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

3月11日(金)、前日に関西の毎日放送で放映された「魔法少女まどか☆マギカ(以下、「まどマギ」と記す)」の第10話が「神回」との情報が、ネタバレとともに伝わり、関東の“まどマギ”ファンはその夜の放送を今か今かと待ちわびていた。

しかし、その日の午後、東日本は史上最悪の震災に見舞われた。宮城県は最大震度7の激震。大津波は、おびただしい数の人命と家財を奪い、東北三県を中心に未曾有の大災害となった。

そして、原発事故。「絶対安全」とうたわれていた原子力発電所は、地震の衝撃と想定を上回る津波の前に、その機能を完全に失い、制御不能となった。度重なる水素爆発により、大量の放射性物質を大気や土中、海洋に漏出させ、今も収束の目処が立っていない。

一方、「まどマギ」は、それから何週間経っても放送されない事態に陥った。「ひょっとしたら永久にお蔵入り」という噂まで聞こえていた。

ネット配信された第10話を見て、その理由がよくわかった。この作品の最終決戦である「ワルプルギスの夜」の描写、正確に言うと、決戦後の光景が、津波被害に遭った町並みそのものだったからだ。雪もちらついていたし。

当時関西でも未公開だった11話と12話にも、同様の災害描写があり、主人公のまどかとその家族が避難所に身を寄せるシーンも、実際の震災被災地を想起させるものだった。

結局、10〜12話一挙放送という形でこの作品の最終回が日の目を見たのは4月22日。本来の放送日から実に1ヵ月以上経ってからのことである。

その内容は、衝撃と感動が詰まっていて、アニメ史、いや日本のエンターテイメント史に残る傑作だったと思う。特に、ほむほむがほむほむでほむほむなところは、マジほむほむだったと言えよう。

しかし、大きな震災を目の当たりにした後で、私の心境はすっかり変わってしまっていた。台詞一つ一つをとっても、見たのが震災前だったなら、おそらく違う印象で受け取ったと思われるものが多い。

例えば、最終話でまどかがマミに語った台詞。

希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、あたし「そんなのは違う」って、何度でもそう言い返せます。

震災によって、被災地のみならず、日本全体が深いダメージを負っていて、誰もが「しかたがない」とネガティブな気持ちになりがちな状況おいて、この台詞はとても深く沁み入り勇気を与えてくれるものだった。

そして、宇宙のエネルギーを絶やさないために少女たちが犠牲になるという「まどマギ」の世界観は、事故を起こし被災地にいっそう大きなダメージを与え続けている原子力発電所の問題を想起せずにいられなかった。「こじつけ」と言われようとも、私の中で、この二つはどうしようもなく繋がってしまったのだ。

「まどマギ」におけるエネルギーシステム

「まどマギ」は、“キュゥべえ(以下「QB」と記す。)”と呼ばれるマスコットキャラ的宇宙生物が、素質のある少女を見つけ出し、願い事を一つ叶える代わりに魔法少女になってもらうという、アニメの世界ではよくあるファンタジーな物語である。主人公のまどかとその友人のさやかは、QBにその素質を認められ、言葉巧みな勧誘で魔法少女になる契約を迫られる。

魔法少女になるということは、少女の肉体から魂を抜き出し、ソウルジェムという宝石に変換すること。そうすることにより、本来の肉体は抜け殻となり、外付けのハードウェアのような存在になる。つまり、生命を失った肉体を、魂の本体であるソウルジェムから操ることになるのだ。まどかたちに先んじて魔法少女になっていた杏子は、この事実を知り、「ゾンビと同じ」と表現している。

そして、人間に悪さをする魔女と戦うことが義務づけられ、場合によっては命を落とす(魂を失う)危険にさらされる。まどかとさやかが尊敬する先輩魔法少女のマミも、魔女に頭から食われ、二人の眼前で惨殺されている。

魔女を倒すと、グリーフシードと呼ばれる卵が残される。ソウルジェムは、魔力を使ったり負の感情を抱く毎に穢れていくのだが、グリーフシードを手に入れ、その穢れを吸い取らせることにより浄化できる。ソウルジェムの穢れを吸い取った分、グリーフシードは穢れが溜まって危険な状態(孵化して魔女が生まれる)になる。QBは、危険な状態になったグリーフシードを食べて、これを処分する。

グリーフシードが手に入らず、ソウルジェムの穢れを浄化しきれなくなった場合、ソウルジェムは崩壊してグリーフシードに変化、魔法少女は魔女に変身してしまう。これは、「希望」が「絶望」に、「祈り」が「呪い」に変化することを意味しており、QBによると、この時莫大なエネルギーが発生、“エントロピーの法則”に基づき目減りした宇宙のエネルギーを回復させるという。

「まどマギ」の中で一括りに“感情エネルギー”と呼ばれているものは、実は二つの要素に分けられる。一つは、魔法少女が「希望」とともに手に入れた魔法力。これを「祈り」のエネルギーとする。もう一つは、「希望」が「絶望」に転じる時に発生し、エントロピーを凌駕して減衰した宇宙エネルギーを回復させる「呪い」のエネルギーだ。

QBが最終的に回収したいエネルギーはこの「呪い」エネルギーであり、魔法少女たちが手に入れた「祈り」のエネルギーは特に必要としていない。あくまでも、魔法少女が魔女を倒すためのエネルギーである。

核燃料サイクルの仕組み

一方、我々人類が築き上げてきた、原子力発電を起点とする核燃料サイクルは、まず原子炉で燃料のウランに中性子を吸収させ、核分裂反応を起こし熱エネルギーを得る。その結果生じる使用済み核燃料の中から、1%ほど含まれるプルトニウムを取り出し、ウランと混合してMOX燃料を作る。

MOX燃料は、効率の良い核燃料として高速増殖炉で使用することを目標にしているが、現状では実用化の目処が立たず、使用済核燃料とそこから抽出したプルトニウムが行き場を無くして処理方法に困っている。苦肉の策としてMOX燃料をプルサーマル炉で燃焼させているが、処分の観点からはほとんど効果が無く、原子炉の危険性をいたずらに高めているという指摘もある。

プルトニウムは、強い放射線(α線)を放出するため、内部被曝すると肺ガンを罹患する危険性が指摘されている。

両者の共通点をこじつける

簡単に言ってしまうと、両者の共通点は、エネルギー確保のために破滅的なリスクを伴うという点である。

まどマギでは、「祈り」のエネルギーを生み出し使うための見返りとして、結果的に魔女という「呪い」を生み出すことになる。これは、原子炉で電力を生み出すために使用済核燃料が生成されるのに似ている。使用済核燃料から抽出されるプルトニウムは、有害だが高速増殖炉を稼働させる燃料でもあり、日本のエネルギー問題を解決する切り札になるという一面を持つ。QBが「呪い」エネルギーを回収して宇宙のエネルギー問題を解決しようとしているのと似ている。

その原子炉や使用済核燃料が近隣住民の害にならないように管理する発電所や自治体は、さしづめ魔法少女と言ったところだろう。発電所の建造物そのものや職員は、事故を起こさないように万全の努力をし、事故になった際も全力でこれに対処する。電力会社と契約し、発電所を誘致した自治体も、当然に安全運用の責任を負い、一体になってその活動を支えていくことになる。

仮に、住民にその意識が無いとしても、誘致に際して交付される補助金や税収増、雇用創出という恩恵を受け、その街で生活している以上は一蓮托生、運命を共にしていると言わざるを得ない。

これは、魔法少女が、魔女の正体を知らない状態で、その退治を義務づけられていることに近い。

(注:あくまでもこじつけです)

魔法少女とソウルジェム

「魔法少女」とは、発電所を含めた自治体そのもの、すなわち「原発の街」と位置づけられるだろう。そうすると、魔法少女の本体である「ソウルジェム」に該当するものは何だろうか?

QBから十分な説明を受けなかった魔法少女たちは、当初ソウルジェムを魔法少女に変身するための小道具だと考えていた。しかし、第6話で、さやかのソウルジェムが肉体から離れる事故が起きたことにより、ソウルジェムこそ魔法少女の本体であり、肉体は外付けのハードウェアでしかないことを知る。

一方、原発の街ではどうだろうか。市民にとって、当初、原発とは富と恩恵を与えてくれる存在で、雇用を創出し、生活を豊かにしてくれるものだった。「街のために原発が必要だ」として誘致したはずである。しかし、実際はどうだろう。街の中心は市民生活ではなく原発そのものになっているのではないか。「街のための原発」であるはずが、「原発のための街」になってしまっている可能性。原発事故により人が立ち入れなくなってしまった街は、それを証明しているように思う。

したがって、原発の街にとって、ソウルジェムとは原発そのもの、もしくは原子炉に相当すると言える。

(注:あくまでもこじつけです)

魔女とグリーフシード

「魔女」とは、魔法少女が「祈り」エネルギーを使い果たした後で「呪い」エネルギーを発して生まれ変わる怪物である。魔法少女たちは、そのことを知らずに、日々この魔女を退治し続ける。魔法少女が魔女を退治すると、そこには魔女の卵である「グリーフシード」が残される。このグリーフシードによりソウルジェムは浄化され、魔法少女は魔力を維持し、魔女への変容を防ぐことができる。

ここは、こじつけがかなり難しかった。

魔法少女を「原発の街」に例えた以上、魔女とはその変容した形、つまり、事故が起きて放射性物質をバラまいている原発を表すのだろうか。酷い事故が起れば、街に立ち入ることは不可能になり、実質ゴーストタウン、すなわち死んだ街になってしまう。まさしく“魔女化した”というイメージに合致する。

しかし、QBが魔法少女の魔女化を目的に契約を交わしていることを考えると、原発事故と魔女を同一視するのはつじつまが合わない。魔女からは「呪い」エネルギーが手に入るが、原発事故からは何も手に入らないからだ。

一方で、「呪い」エネルギー=プルトニウムという解釈を元にすると、「魔女」は、プルトニウムを生み出すもの、すなわち使用済核燃料とすることもできる。ただし、その場合は、“やがて魔女になる魔法少女”という存在が、すなわち核燃料ということになってしまう。これでは魔法少女が魔女を倒すということの意味が通らなくなる。プルサーマルでプルトニウムを燃焼処分するとか、ある意味魔女を倒すようなイメージだが、話としてはあまり面白くならない。だからどうした、という話になってしまう。

そこで、ここは無理に一つにまとめず、「魔女」に「原発事故」と「使用済核燃料」の二つの意味を持たせることにする。ひとまとめにすると、原発運用のかかる「不都合なリスク(ただしプルトニウムを抽出できる)」という形に集約できるが、そこまで抽象化してしまうと、これまたわけがわからないので、あえて矛盾を含んだまま話を進めたい。

そうすると、「グリーフシード」の定義もまた曖昧なものになってくる。魔女を倒した後でソウルジェムを浄化するという特性を考えると、事故を収束させた後に復活する「安全神話」がこれに当たるだろう。事故を短期で収束させ、被害を軽微に見せれば、むしろ原発の安全性をアピールすることができるという意味で。一方、魔女を使用済核燃料に仮定すると、そこから抽出されるという意味では、これこそ「プルトニウム」に相当すると考えられる。「グリーフシード」も、「魔女」同様に、二つの意味を持たせておきたい。

では、“魔法少女が魔女を倒す”、とは、いったい何を意味するのか。

「魔法少女」は発電所を含む自治体、すなわち「原発の街」に相当し、原子力の有用性を信じて一心不乱に原発を運営・推進していく立場にある。しかしながら、その中では、当然「原発事故」や「使用済核燃料」などの「不都合なリスク(=魔女)」も表面化するだろう。

「原発の街(=魔法少女)」は、そのような問題を解決し、ネガティブな印象を払拭しなくてはならない。なぜなら、原発事業が滞れば、街の経済は停滞し、雇用も失われるからである。使用済核燃料は、冷却後に粛々と処理施設に運ばれ、原子炉は、多少の事故が起こっても収束後は何事も無かったかのように危険性を否定、もしくは容認されることになる。

このように、表面化する「不都合なリスク」を解決(もしくは隠蔽)することが、“魔法少女が魔女を倒す”ということに他ならない。その後に残るのは、「安全神話」と「プルトニウム」、すなわち「グリーフシード」なのである。

(注:あくまでもこじつけです)

さあ、かなり無理が出てきたが、あくまでもこじつけなので、このまま強引にまとめることにする。

  • 魔法少女=原発の街
  • ソウルジェム=原子力発電所、または原子炉
  • 「祈り」のエネルギー(魔法力)=日々生活に使用する電力
  • 魔女=原発に絡む不都合なリスク(使用済核燃料、原発事故)
  • グリーフシード=安全神話、プルトニウム
  • 「呪い」のエネルギー(エントロピー対策)=高速増殖炉により生み出される未来エネルギー

また、魔法少女になる前のまどかやさやかは「素質を持った少女」と呼ばれていたが、これは立地条件の話に該当する。海岸線に近く、人口密集地から離れた自治体にだけ「原発の街」になる資格が与えられている。


今回は(多少無理はあるが)設定をこじつけたので、次回は、この設定を前提にしてストーリーをこじつけていく。

乞うご期待!

(注:あくまでもこじつけです)




Twtools(つぃつーるず)

2011年5月2日月曜日

ブログのタイトル変えました

「とある魔術の禁書目録」の放送前だったので、ついノリでつけてしまったタイトルだけど、放送が終わってみれば、何だか寒いぞ、というわけで、タイトルを変更しました。

当ブログは
「とあるウェブ制作者の個人記録」
から
「あの日見たウェブの名前を僕達はまだ知らない」
に名称変更します。

って、またアニメタイトルパロディかよ?! しかも、今度は1クール。

ということは、また7月くらいにタイトル変えるのか?と。まあ、そういうことになると思います。

そもそも、サイトのタイトルと変えると、検索エンジンさんに嫌われるのでは、って?

大丈夫、このブログは検索エンジンからの流入を一切考えていません。あくまでも、TwitterとFacebookからの延長なので、SEO対策(笑)よりもネタの鮮度を重視。

ところで、ネタ元の「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」見てますか? 個人的には、視聴者を泣かす気満々で、しかも死者が黄泉がえる系の話は嫌いなのですが、この作品は、妙に引き込まれてしまいます。

特に、エンディングテーマの「secret base 〜君がくれたもの〜(10 years after var.)」は、かなり良い。原曲はZONEの代表曲なのだけど(本当に、もうすぐ「10年後の8月」)、声優さんがカバーしているからか編曲が良いからか、より情感がこもってノスタルジックに仕上がっています。しかも映像センスが素晴らしい。

ストーリーも、誰もが身に覚えがあるような思春期のギクシャクした人間関係とその心情を描いていて、最終回は涙腺崩壊必至ではないかと今から身構えています。

それから、Twitterのアニメクラスタから「メンマちゃん、最高にブヒれる。ブヒィイイ」という声がよく聞かれるのですが、いつから「萌え」のことを「ブヒ」と言うようになったんだろう? シャルルあたりが発端かな?

まあ、確かに、「萌え」というより「ブヒ」だよねw。

本題に戻りますが、「あの日見たウェブ(サイト)の名前を僕達はまだ知らない」ことって、よくありますよね。どこかで見たはずだけど、どこだったか思い出せない、ブックマークを探しても見つからない、ググってもヒットしない、など。

このブログでは、そういったことは一切掘り下げませんけど。