実は、「iPhoneで企業プロモーションアプリを作るコツ」みたいな記事を書こうと思ったのですが、全く逆の結論に至りましたので、急遽企画変更します。
理由1: アプリバブルはもう終わっている
AppStoreがオープンした直後の2年前は、出すアプリ出すアプリが片っ端からダウンロードされて話題になったが、今は、むしろアプリの過剰供給状態。アプリを出せば注目されて、「あの○○社がiPhoneアプリ参入!!」とか騒がれることもほとんど無くなった。
理由2: ユーザーは有用なツールだけを求めている
iPhoneOS3の頃は、インストールできるアプリの数が130個(デフォルトのアプリを除く)と制限されていたため、ユーザーは、本当に必要なアプリしか常駐したがらなかった。iOS4になって、2000個以上のインストールが可能になったが、フォルダ管理が煩雑であるため、その傾向はさほど変わらない。
仮に、片っ端からインストールするユーザーがいたとしても、多すぎるアプリの中で、無用なものは埋没してしまう。
理由3: メディア(情報媒体)系のアプリは有用なツール足りえない
(特に広告)メディア系のアプリは、特定企業の利益を優先するから情報量が少なく、役に立たない。
例えば、自社が配信するニュース記事だけを扱ったビューワーとか、広告クライアントの情報だけを扱ったグルメ案内とか。すごく狭い地域だけを扱った観光案内なども、どうしてデスクトップに常駐させてもらえると思うのか不思議である。
理由4: 話題をさらっても一瞬だけ
中には、とても秀逸だったり、面白かったりして話題になるアプリも存在する。そういったアプリは、たくさんダウンロードされてブログやツイッターなどでも紹介されるから、一見大成功に見える。
しかし、その熱狂はせいぜい2週間で終了。即削除。
理由5: すぐに陳腐化する
iPhoneアプリは、史上最も過激な競争市場と言われるくらい激しい競争に晒されている。価格もそうだが、次から次へと高機能化し、洗練されたものが登場する。
そのような状況で、「最も有用なツール」を維持し続けるのは困難であると言わざるを得ない。iPhoneアプリは「2番じゃダメ」なのである。
理由6: PR機会は実質ワンチャンス
iPhoneアプリをリリースする最大のメリットと言えば、それなりにユーザーの注目を集めているAppStoreにリストアップされることである。そこで好評ならば、レビューで高い評価を得ることができ、人気アプリとして長い期間「トップチャート」にリストアップされることになる。
そうなれば、新たにAppStoreに訪れる人たちの目について、とりあえずダウンロードされ続ける。(ただし、愛用されるかどうかは不明。)
しかし、逆にここで不評を買えば、低い評価を下され、その後も日の目を見ることはなくなる。どんなに改善を加え、修正を施しても、多くのユーザーは、一度削除したアプリをそう簡単にはデスクトップに戻さないからだ。私のiTunesでも、削除したアプリほどアップデートを繰り返しているが、いくら更新しようがデスクトップに戻す気にはまるでなれない。
まさに、一発勝負の世界。企業が、成果を求めて計画的に行うプロモーションの手段としては、あまりに博打的と言える。
ただし、これにはちょっとした裏技があるようだ。ほぼ同じ内容のアプリを、あたかも別ものであるかのように見せかけて再度「新着アプリ」としてリリースしてしまう方法。
ユーザーが、これをどう思うかはわからないが、実際にngmoco, Inc.とTeamLavaの2社は、そうやってロングランを実現しているようである。
例外: 期間、対象、機会を限定した目的なら成功する場合も
単発的なイベント告知など、予め有用なツールであることを放棄したプロモーションならば、成功する可能性は高い。もちろん、何をもって「成功」とするかが問題ではあるが。
先日、ローソンが「劇場版ヱヴァンゲリヲン破」のBlu-ray、DVDの発売に関連して、AR(拡張現実)を使ったプロモーションを展開したが、(商品の売上げはともかく)イベント集客効果としては大きな成果を収めた。プロモーション自体も、iPhoneの機能を使わなければ実現しなかったという点も重要である。
余談ではあるが、iPhoneアプリのリリースには審査が必要なので、申請してからAppStoreにラインナップされるまでに一定の時間がかかる。期日を定めたイベントのプロモーションは、タイミングを外さないよう、十分な配慮が必要である。
最近では、参院選挙が終了してからリリースされた各党マニフェストアプリや、開催3日目にしてようやくリリースされたツールドフランスの情報アプリなどがある。
私が担当者だとしたら、ゾッとする話である。
そういうわけで、一部の例外を除いては、それなりに高いコストをかけてプロモーションアプリを作ったとしても、たいした効果は見込めません。
それどころか、iPhone=アプリという安易な固定観念が、スマートフォンを対象にした企業プロモーションに、とてつもなく大きなデメリットをもたらしたりもしているのです。
その件については、また次回のエントリーでお話しします(必見!)。
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